「家具を並べると狭く感じる。」
「元々充分なスペースがある部屋ではない。」
ごちゃっと物が溢れかえった室内よりも、何もない広々とした部屋の方がリラックス感が増すのはわかっているけれど、元々部屋が狭い為「できるだけものを減らしても狭く見えてしまう」という場合は、配色を工夫することで、広く見える部屋を作ることが可能です。
「充分なスペースが確保できている」「天井が高い」など、建てる前から広さを意識した間取りやデザインを考えることができない場合に使える部屋を広く見せるテクニックをカラーコーディネートの仕方にテーマを絞って8つ紹介します。
比較対象として、狭く見える配色の部屋も載せますので、コーディネートのヒントにしてください。
床・壁・天井の色を変えることができる(今から決める)場合は、「②広く見えるベースカラーの選び方」から、床・壁・天井の色はそのままにして、ソファ・家具・ラグ・カーテンなどの色で広さを表現したい方は「③広く見えるメインカラーの選び方」からお進みください。
①インテリアの色の構成の基本
部屋の中にある色は、下の3つに分けることができます。
広い・狭いを印象づけるのは、足すと95%になる「ベースカラー」と「メインカラー」の部分の色になります。
「インテリアコーディネートをするのが初めて」という方にもわかりやすく、パースやイメージ画像を使って、それぞれの色の選び方を説明していきましょう。
②広く見えるベースカラーの選び方

ベースカラーは、フローリング(床)の色・壁&天井のクロスの色・ドア・クローゼットの建具の色です。
ベースカラーは、建売住宅や賃貸物件では、入居前に決まっていますが、新築やリフォーム・リノベーションで配色を決めることができる場合は、どんな色を選ぶかで広さの印象が違って見えます。
②-①広く見えるフローリング(床)の色
フローリング(床)の色には、木目をベースに、暗いブラウンから明るいブラウン、彩度が低めの白っぽいブラウンなど様々な色柄があります。広く見えるフローリング(床)の色は、白に近い色です。
同じリビング空間を「暗いブラウン」「真ん中くらいのブラウン」「明るいブラウン」のフローリングでコーディネートした場合を比較すると、その違いは一目瞭然です。
※ドア・収納家具・ダイニングテーブル・ダイニングチェア・室内窓の色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
いかがですか。一番下の白っぽいブラウンのフローリングのリビングが一番広く見えますね。
白っぽい色のフローリング(床)は、汚れや傷が目立つのがデメリットですが、「部屋を広く見せる効果はピカイチ」と覚えておきましょう。
②-②広く見える壁の色
壁は、床と直角の位置にある為、立っている時でも座っている時でも、どの場所にいても、真っ先に目に入る部分です。
壁の色は、何千、何万種類とあるクロスから選ばなければならず、迷いますが、広く見える壁の色は、白に近い色です。同じリビング空間を「濃い色」と「ホワイト」の壁紙でコーディネートした場合を比較すると、その違いは一目瞭然です。
いかがですか。下のホワイトの壁紙のダイニングの方が広く見えますね。
ホワイトの壁紙には、ホワイト(真っ白)・ベージュ系のホワイト(ウォーム系ホワイト)・グレー系のホワイト(クール系ホワイト)があります。
※床・ダイニングテーブル・ダイニングチェア・カーテンの色は同じ。
※イメージ画像は、SINCOL トータルコーディネートシミュレーションで作成。
この場合は、ウォーム系ホワイト<クール系ホワイト<ウォーム系ホワイトの順番で広く見えます。これは、クール系ホワイトが後退色をベースとしたホワイト、ウォーム系ホワイトが進出色をベースとしたホワイトだからです。
- 「後退色」は、後ろに下がって見える色。
- 「進出色」は、前に迫って見える色。
下記は、全く同じ大きさの花瓶です。
「後退色」の瓶は奥に置いてあるかのように、やや小さめに見え、「進出色」の瓶は手前に置いてあるかのように、やや大きく見えます。
壁は、床と直角に立っていて、視線の先にあるものなので、アクセントクロスの色を選ぶ時も「進出色」「後退色」の特徴を活用すると効果的に空間を広く見せることができます。
※床・ダイニングテーブル・ダイニングチェア・カーテン・壁紙・天井の色は同じ。
※イメージ画像は、SINCOL トータルコーディネートシミュレーションで作成。
いかがですか。上段の「進出色」のアクセントクロスよりも、下段の「後退色」のアクセントクロスのダイニングの方が広く見えますね。
②-③広く見える天井の色
天井のデザインには、梁をわざと見せ、天井の色と変える「梁見せ」がありますが、ここでは、真っ平らなフラット天井の場合で説明します。
広く見える天井の色は、白に近い色です。
同じリビング空間を「ブラック」「ブラウン(木目)」「ホワイト」の天井でコーディネートした場合を比較すると、その違いは一目瞭然です。
※ドア・クローゼット・収納家具・デスク・ダイニングテーブル・ダイニングチェア・室内窓(間仕切り)の色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
いかがですか。一番下のホワイトクロス仕上げの天井のリビングが一番広く見えますね。
白っぽい色のクロスを天井に貼ると「経年劣化や汚れでみすぼらしく見えそう」という場合は、床・壁・天井の順番で色を白っぽくしていき、視覚効果を使って天井を高く見せるテクニックを活用する方法もあります。
※床・ダイニングテーブル・ダイニングチェア・カーテンの色は同じ。
※イメージ画像は、SINCOL トータルコーディネートシミュレーションで作成。
②-④広く見える建具の色
ドアやクローゼット・収納扉など、壁面にある建具の色は、フローリング(床)と同様に、木目をベースに、暗いブラウンから明るいブラウン、彩度が低めの白っぽいブラウンなど様々な色柄があります。広く見える建具の色は、白に近い色です。壁の色と似た淡い色でまとめると圧迫感が少なく、広く見える空間になります。
同じリビング空間を「暗いブラウン(木目)」「明るいブラウン(木目)」「ホワイト」の建具でコーディネートした場合を比較すると、その違いは一目瞭然です。
※ダイニングテーブル・ダイニングチェア・リビングテーブル・ソファ・フローリング(床)の色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
いかがですか。中央の明るいブラウンと一番下のホワイトの建具のリビングが広く見えますね。
また、床色が濃い場合の建具の色は、壁と同じ淡い色にするか、天井の色の視覚効果テクニックのように、床→建具→天井の順番で明るくしていくと開放感がアップして見えます。
※ダイニングテーブル・ダイニングチェア・リビングテーブル・ソファ・フローリング(床)の色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
③広く見えるメインカラーの選び方

メインカラーは、テーブルや収納家具などの木製家具(木目家具)、ソファ・ラグ・カーテンなどのファブリックの色です。
③-①広く見える家具の色
リビングに置くリビングテーブルやテレビボード・収納家具、ダイニングに置くダイニングテーブルやダイニングチェアなどの家具には、木目をベースにした、暗いブラウンから明るいブラウン、木目のないブラック・グレー・ホワイトといった様々な色柄があります。 広く見える家具の色は、白に近い色です。床色と関係なく淡い色や白っぽいでまとめると家具の存在感が薄れ、広く見える空間になります。
※階段・建具・フローリング・ソファの色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
※建具・ソファ・デスク・収納家具・フローリング(床)の色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
いかがですか。壁面いっぱいに並べた家具でも、薄いブラウンの木目やホワイト扉だと圧迫感がなく、壁と同じ色なので広々とした印象ですね。
※建具・ソファ・デスク・収納家具・フローリング(床)の色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
また、濃い(暗い)床柄の場合でも白っぽい色の家具を組み合わせることで開放感がアップして見えます。
※階段・建具・フローリング・ソファの色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
※建具・ソファ・デスク・収納家具・フローリング(床)の色は同じ。
※イメージ画像は、Panasonic カラーコーディネイションで作成。
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③-②広く見えるソファの色
ソファには、ここで例を挙げきれないほど様々な色柄がありますが、リビングのメイン家具であるソファの色は、白っぽい色(薄い色)にすると広々とした印象になります。また、壁の色のところで紹介した「後退色」のソファも実際より小さく見える視覚効果がある為、インテリアに個性を出したい方におすすめです。
淡い配色の中に、黒のソファ(黒っぽいソファ)をコーディネートすると、ソファの存在感が出てしまい、狭く見える印象。
床や壁色と同程度の白っぽい色(明るい色)のソファにするとソファの存在感が薄くなり、空間全体がぼんやりと見え、広々とした印象になります。
暗い配色の中に、黒のソファ(黒っぽいソファ)をコーディネートすると、家具をギュっと詰め込んだような印象になり、狭く見える。
壁色と同程度の白っぽい色(明るい色)のソファにするとソファの存在感が薄くなり、、広々とした印象に。
「後退色」(青)のソファと「進出色」(赤)のソファは同じ大きさですが、画像を見比べると、「後退色」(青)のソファの方が少し小さく見えます。緑や紫、青紫も後退色です。リビングの顔に、淡い色のソファやぼんやりとした無難な色のソファではなく、有彩色や濃い色のソファをコーディネートしたい場合は、これらの色を積極的に選びましょう。
①-②-③広く見えるラグの色
ラグも、ここで例を挙げきれないほど様々な色柄がありますが、床面に色をつけるのラグの色は、フローリング(床)の色と同様に、白っぽい色(薄い色)にすると広々とした印象になります。床色が薄いブラウン系の場合は、床色と明るさを揃えると、まとまりと広さのあるインテリアになります。床色が濃いブラウン系の場合は、床色ではなく、淡いソファの色と似た明るさのラグを敷くことで、暗く狭い印象を解消できます。
明るい床に暗い色のラグを敷くと、ラグの濃さが強調され、狭い印象に。床と似た淡い色のラグを敷くと開放的な印象がアップし、広く見える。
暗い床に合わせて暗い色のラグを敷くと、床全体が暗くなり、狭い印象に。壁やソファに合わせて、淡い色のラグを敷くと開放的な印象がアップし、広く見える。
③-④広く見えるカーテンの色
カーテンには、様々な色、様々な明るさの色柄があります。カーテンは床と直角、つまり視線の先に下げるものなので、壁の色と同様に、白っぽい色(薄い色)にすると広々とした印象になります。白っぽい色(薄い色)のカーテンで色付きを選ぶ場合は、壁色に馴染む淡い色にしましょう。
また、壁の色のところで紹介した「後退色」のカーテンも実際のカーテン位置より遠くに見せる視覚効果がある為、インテリアをおしゃれに見せたい方におすすめです。
※床・ソファ・コーヒーテーブル・壁・天井の色は同じ。
※イメージ画像は、SINCOL トータルコーディネートシミュレーションで作成。
下段の明るいカーテン(薄いカーテン)の方が開放感があり、広く見えます。
※床・ソファ・コーヒーテーブル・壁・天井の色は同じ。
※イメージ画像は、SINCOL トータルコーディネートシミュレーションで作成。
壁色に馴染む下段の色付きの淡いカーテンの方が開放感があり、広く見えます。
※床・ソファ・コーヒーテーブル・壁・天井の色は同じ。
※イメージ画像は、SINCOL トータルコーディネートシミュレーションで作成。
後ろに下がって見えたり、小さく見える後退色のカーテンの方が開放感があり、広く見えます。
広く見える部屋にするためのカラーコーディネートのコツが掴めたでしょうか。
床・壁・天井は「白っぽい色」が基本です。これは、ホワイトが膨張色で、実際よりも大きく見える為、視覚的に広々とした印象になるからです。
また、家具を薄い色にするのは、背面に見える壁色と馴染ませ、存在感を薄くする為。
こう書くと「全部白っぽい色になり、ぼんやりとした印象のインテリアになってしまうのでは?」と逆に「落ち着かない」「物足りない」と感じてしまう方もいらっしゃるでしょう。
インテリアカラーコーディネートには、ここでは詳しく紹介しなかったアクセントカラーというものがあります。
ソファの上に置くクッション、テーブルや家具の上に飾る雑貨、癒し感をアップするための観葉植物や花など、いわゆる「飾る部分」に使う色です。
アクセントカラーは、部屋全体の色のうち5%程度を占める色なので、ぼんやりとした配色の中に、どんな色を持ってきても「せっかく広くみえていたのに、狭くなった」ということがありません。
広さは感じるけれど、淡い配色の空間(インテリア)が好きではないという場合は、アクセントカラーで思いっきり個性を出しましょう。