足元から温かくなる床暖房。
近頃のファミリー向けのマンションは、床暖房が標準装備となっていることが多いです。
少し前に紹介した中古マンションの内装チェンジの案件も、床暖房仕様のLDKで、「ヴィンテージ風に」との要望を伺った時、一番困ったのが床材の選定でした。
フローリングを新たに張り替えるとコストが高くついてしまう為、既存のフローリングの上に、新しくヴィンテージ風のフロアタイルを貼る(上張り)にするのが良さそうでしたが、床暖房対応フローリングに上張りできる床材の選択肢が少ないのです。
既存の無難な印象の床暖房対応フローリングを上張りして「色柄を変えたい」「今流行のヴィンテージ風な床にしたい」時のヒントとして、筆者が行った上張り実例を紹介していきましょう。
床暖房対応フローリングの上張り
【POINT1】バリアフリー仕様の住まいには厚みが薄いフローリング材
既存のフローリングの上から、新たなフローリング(床材)を貼ると、選んだ床材の厚み分だけ床が高くなります。
設計寸法3mm以下、仕上がり寸法5mm以下のバリアフリー住宅の場合、上張りする床材に厚みがあると「ドアの開閉ができなくなる」などの弊害が出てくる為、3~5mm以下の上張り床材を使わなければなりません。
バリアフリー仕様の既存床の上から貼る床材には
- サンゲツのフロアタイル(2.5mm厚)
- パナソニックのWPBリフォームフロアー(1.5mm厚)
- LIXILのハーモニアスリフォーム6(6mm厚)
- NODAのビノイエ リフォームフロア(3.5mm厚)
- ウッドワンの無垢フローリングピノアース 6mm
などがあります。
【POINT2】上張りの場合も床暖房専用床材を使わなければならない
上記に挙げた床材の中で、筆者がよく使うのがサンゲツのフロアタイル(2.5mm)です。
- 色柄が豊富
- 厚みが2.5mmなので上張りに適している
ので、今回のヴィンテージ風床に張り替え(上張り)に使えそうな気がしました。
ただ、素材が塩ビなので、熱による「突き上げ」や「縮み」が起こる可能性があり、床暖房には適していないことが判明。床暖房を使ったことがある方は、ご存知だと思いますが、床の上に敷くラグマットに“床暖専用”があるのは、熱による伸び縮みがしにくい素材で作られているからです。
床材の場合も、全てのフローリング(上張りに対応した床材含む)が床暖房に使えるわけではありません。
サンゲツのフロアタイルが大好きな筆者はお施主様が「床暖房を使いません。」と言って下さるのを期待していましたが、「多分使います。」とのことでしたので、サンゲツのフロアタイルは選定から漏れました。
床暖房対応で上張りできて厚みが薄いフローリング(床材)
床暖房対応床材と謳った製品で、上張りできて、厚さが薄いものを調べた結果、下の製品が該当しました。
無難な色柄の床暖房対応上張りフローリング
3.5mm厚なので理想的ですが、色柄がヴィンテージインテリアに合いそうにない為、却下しました。その他色々調べましたが、施工共で受けている(材料のみの発注は不可の)業者さんだったので、自社で床の張り替えをしたい筆者には不向きです。
トレンドのヴィンテージ系の床暖房対応床材
あまりの既製品の少なさに、「そもそも、床暖房仕様のフローリングを張り替えてイメージを変えたいと思う方が少ないのでは?」と疑いを持ち始めた頃に見つけたのが
- はめ込み式床材 石目調・古木調フロアタイル Rigid Click リジッドクリック(5mm厚)
- はめ込み式床材 木目調フロアタイル Rigid Click WOOD リジッドクリックウッド(5.5mm厚)
「厚みが薄い」「かっこいいヴィンテージ風」の両方を満たした株式会社 友安製作所の製品です。
「通販で買って自分達で張り替え」を目的としたDIY向けの床材で、接着剤不要で施工できる(置くだけなので原状復帰も可能な)ところがポイントです。
この製品、ネットで見るよりもしっかりした素材で、表面のプリントも非常にリアルです。
傷が入ったように見える薄い部分は、何かに擦れた跡ではなく、最初から入っているものです。
リジッドクリックのヴィンテージ古木調のダスリルとリジッドクリックウッドは、どちらもヴィンテージな風合いですが、ダスリルは表面がフラット、リジッドクリックウッドは表面が少し凸凹していて、木の質感があります。
これを床貼業者さんにお願いして貼って頂くことにしました。
上張り床材の仕様が決まったらやること
案件のマンションは「バリアフリー仕様の住まいには厚みが薄いフローリング材を」に記載したバリアフリー仕様の住まいなので、床材を1枚だけサンプル用注文して、色んな場所に置いて、どんな弊害が出てくるか確認していきます。
※専門業者に施工をお願いする場合は、弊害を確認する必要はありませんが、選定した床材がDIY向け製品だったので、自分で施工する方のために確認した方が良い場所を記載しておきます。
※今回の案件は、フローリングの色柄を全部変える為、LDKだけでなく、玄関からLDKに入る廊下、LDKの隣にある寝室も上張りします。
ドア開閉動作の確認
上張りしても
を確認する必要があります。
※動作確認に使用した上張りフロアタイルは、リジッドクリックのヴィンテージ古木調のダスリル(5mm厚)
引戸の下枠や施工しない場所など既存フローリングよりも高くなる箇所の確認
- 引き戸に下枠がある場合
- 玄関前の廊下のフローリング
- トイレや洗面など床を上張りしない場合、
は、上張りする床材が下枠・玄関框・既存床よりも高くなることがあり、見切り材を入れて段差の解消をする必要があります。
※高くなる場所に使用した上張りフロアタイルは、リジッドクリックのヴィンテージ古木調のダスリル(5mm厚)
玄関框・洗面引戸・和室引戸の段差には、見切り材を使用しました。
狭いキッチンの収納量を増やす為、けこみ(台輪)が引き出しになってるタイプのキッチンがあります。
引き出しと床の隙間は約15mm程度空いてるので、上張りしても最下部の収納を引き出すことは可能ですが、キッチン施工時に既存のフローリングを後貼している場合は、既に引き出しと床の隙間が無いので、注意が必要です。
床暖房対応はめ込み式フロアタイルを床暖房フローリングの上に上張りした実例(工期:2日※18畳分)
今回の施工では、リジッドクリックウッドの古木調プルラを採用しました。
床暖房対応はめ込み式フロアタイルの施工にあたって
リジッドクリックウッドの古木調プルラを、成人男性2人に18畳分(210枚)を使用して施工して頂いた感想です。
2枚の凸凹を組み合わせて床に貼る「はめ込み式」。意外とカッチリはまるので、はめ込んだ後「間違った!!」と思って外そうとしても、簡単に外れないそうです。住人からすれば、暮らしている最中に、床材がずれることがないという安心感があります。
部屋が長方形であっても、210枚全てをそのまま貼れるわけではありません。
キッチンキャビネットの下、掃き出し窓の下、引き戸の控え壁などは、床が凸凹しており、その形に沿って、床材をカットする必要があります。製品ページには、「カッターで2回ほど切れ込みを入れて折る」と書いてありますが、しっかりとした素材なので、折る時に力が必要です。
床暖房対応はめ込み式フロアタイル完成写真・照明&家具設置後写真
いかがでしたか。
床暖房のフローリングをヴィンテージテイストの床に変える。
今回、少し難しい条件を頂いたことで、「はめ込み式床材」という新たな床材との出会いがありました。
DIY向け製品は、通常建築で扱うプロ製品とは隔たりがあり、DIY製品を使おうとすると「そんな素人が使う材料なんて…」と偏見の目で見ることが多いボス。
しかしながら、施工に立ち会ったボスは、「これはなかなか考えて作られてる良い製品だ。」とえらく感動していました。
精巧過ぎる為「素人が貼るのは難しいのでは?」と心配していたくらいです。