近頃の間取りは対面キッチン・ダイニング&リビングがL型、若しくは、対面キッチンの前にダイニング&リビングが繋がるI型の開放的な間取りが主流です。
現在取り掛かっている案件は「個別になった和室を繋げてリビングダイニングに」という要望から始まり、お施主様が「間取りTouch!」を使ってご自身で作られた理想の間取りを元にプランを作成し、GW前に工事が完成する予定です。
元々の間取りはこうです。(パースは筆者作成)
4.5帖の和室と6帖の和室が隣同士にある昔のお家です。
お施主様の希望は「アイランドキッチン+ダイニング+リビングの縦長の間取り」でした。
①和室の収納と和室間の壁を取っ払う、②台所を無くす、③洗面・風呂の位置を移動するの3つでLDKの範囲を決定し、20帖の空間を確保しました。
この大きなLDKに、キッチン、ダイニング、リビングを作っていくことになるのですが、冒頭に書いた「縦長」と「横長」のどちらのタイプのリビングの方が良いか解説していきましょう。
縦長リビングってどんな間取り?
今回、お施主様が希望された縦長リビングとは、キッチンの前にダイニング、その向こう側にリビングがあるI型のLDKレイアウトです。
上記のようなレイアウトを冒頭の間取りで実現するためには、掃き出し窓側にキッチンエリア、ダイニングエリア、リビングエリアの順に並べていく方法があります。
ここで考えなくてはならないのが、「キッチンエリア・ダイニングエリアにどの程度の面積が必要か?」です。
キッチン・ダイニング・リビングそれぞれに必要な面積は?
①キッチンエリアに必要な面積は?
システムキッチンの奥行きは、既製品で65cmです。(※天板の奥行)
対面型にすると、キッチンの後ろに食器や家電の収納スペースと冷蔵庫を置くスペースが必要になります。
それぞれの奥行きは、食器棚や家電収納が約45cm、冷蔵庫が、一般家庭に多い300~399Lタイプで約70cmです。
また、キッチンの両側を人が通る場合、最低60cmは必要で、更に、キッチンと収納部+冷蔵庫の間は75cmほど必要になってきます。
エリア分けした図に、キッチンに必要なスペースを書き込んでみると
選定したキッチンの幅は240cmなので、キッチンエリアに必要な面積は、210×300cm。6.3㎡の約3.8帖になります。
[キッチンを対面にする場合に必要な奥行き]
- 食器棚と家電収納:約45cm
- 冷蔵庫:約70cm
- 通路(キッチンと食器棚の間):75cm以上
- キッチン:65cm(※造作腰壁の場合。「システムキッチンだけで対面にする」「対面側にも収納を設ける」等の場合は、サイズアップ。)
[キッチンを対面にする場合に必要な幅]
- キッチンの幅+通路60cm
②ダイニングエリアに必要な面積は?
ご飯を食べる時、必要な一人分のテーブルの上のサイズは、W60×D40cmです。
- 2人用だと120×40cm、または60×80cm
- 4人用だと120×80cm
が最低サイズになり、これよりも大きなダイニングテーブルを選ぶと、余裕のあるダイニングスペースを作ることができます。
しかしながら、これはテーブルのサイズだけの話で
- 椅子に座る
- 椅子から立つ
- 椅子に座ってる人の後ろを人が通る
など、食べる以外に見ておかなければならないスペースがあります。
「単純にダイニングの広さが○○cmだから△△cmのテーブルが置ける」と上記の動作スペースを考えずに家具をレイアウトしてしまうと、「椅子が壁にぶつかる」「誰かが椅子に座ってる時に後ろを通ることが出来ない。」など、動きに支障が出てしまいます。
- ダイニングチェアを引いてテーブルに着席する時のテーブルの前からチェアの後ろまでの距離は約75cm
- ダイニングチェアに座っている時のテーブルの前からチェアの後ろまでの距離は約40~50cm
更に、
- 座ってる人の後を通る時は椅子の後ろから約60~90cm
が必要です。
ダイニングテーブルの幅+60~90cm、奥行+50cm+60~90cmが必要。
※ダイニングチェアが無い面を人が通らないレイアウトにするのであれば90cmは省略可。
キッチンエリアを書き込んだ図に、上記の必要なスペースを考慮してダイニングスペースを書き込むと
選定したダイニングテーブルのサイズは180×90cmなので、ダイニングエリアに必要な面積は、270×360cm。9.72㎡の約6帖になります。
- 90cm+ダイニングテーブルの幅+90cm
[ダイニングに必要な奥行き]
- 90cm+50cm+ダイニングテーブルの奥行き+50cm+90cm
※ダイニングテーブルの置き方によって幅と奥行きを変えることも可能。
※ダイニングチェアの無い面を壁とくっつけてレイアウトする場合は通路幅の60~90cmは不要。
③リビングエリアに必要な面積は?
- ソファの奥行きは約80~100cm
- メディアボードの奥行きは約45~50cm
リビングは動き回るというより、じっと座ってくつろいでいるというイメージが強いですが、「ソファの前に置いたテーブルの上にある本やカップを取る」「メディアボードの前にしゃがみ込んでデスクを入れ替える」などの動作が発生する場所です。
- ソファに座った状態でテーブルの上の物を取るのに適切な距離は30cm
- メディアボードの前にしゃがみ込んで作業をるする時に必要なスペースは60cm
さらに、通路スペースを取る場合は60~90cmが必要です。
ソファとテレビボードの最適な距離は「テレビ画面の高さ×3倍が適切」と言われていますが、4K液晶テレビの場合は半分の1.5倍です。
55インチの4Kテレビを購入予定なので、最適な視聴距離は約110cmです。
選定したソファのサイズは220×100cmほど。リビングエリアに必要な面積は、240×360cm。8.64㎡の約5.3帖になります。
[リビングに必要な幅]
- ソファの奥行き+30cm+コーヒーテーブルの奥行+60cm+テレビボードの奥行
[リビングに必要な奥行き]
- 90cm+ソファの奥行+90cm
※ソファの置き方によってサイズが変わる。
※ソファを壁とくっつけてレイアウトする場合は通路幅の60~90cmは不要。
[テレビとソファの適切な距離]
- 選定した液晶テレビの高さ×3、または高さ×1.5
縦長リビングの問題点を洗い出す
「20帖のLDK。」
こう聞くとめちゃくちゃ広いリビングを想像しますが、実寸に伴って、システムキッチンや家具をレイアウトしてみると、しわ寄せが全てリビングにきているのが、おわかり頂けるでしょうか。
ここまでの流れは、キッチンに必要な面積→ダイニングに必要な面積→リビングに必要な面積の順にエリアを取っていったので、広いリビングにしたいならリビングを優先して「リビング→ダイニング→キッチンの順にエリアを取っていったら良いのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。
プラン計画をキッチンエリア→ダイニングエリア→リビングエリアの順番でする理由
[①キッチンエリア]
キッチンエリアにはメーカーの既製品であるシステムキッチンを使うのが一般的です。
システムキッチンには、ユニットの幅は15cm刻み・カウンターの奥行きは65cm・キッチンとして最低限機能するキッチンの大きさはI型だと幅210cm~、L型だと225×165cm~くらいというルールがあります。(これ以下のサイズだと天板の上にまな板を置く作業スペースが無くなってしまう。)
また、壁付けキッチンの選択肢が無い場合、「対面キッチン」には背面にスペースが必ず必要です。「食器棚や冷蔵庫を別の場所に置く」方法もありますが、キッチン・冷蔵庫・食器棚間は、2~3歩で移動できるのが理想です。食器棚や冷蔵庫が離れすぎていると、移動距離が長くなり、使い勝手が悪くなります。
[②ダイニングエリア]
快適に食事をする為に必要な最低限の大きさ(広さ)があり、食卓に座る人数も決まっているため、「テーブルを小さくする」「椅子の数を減らして家族時間差でご飯を食べる」といった調整を行わない場所です。
[③リビングエリア]
ソファのサイズ・形(I型・寝椅子付き・L型など)には、様々なものがあります。また、4人でくつろぐ場合、1人掛けソファ、2人掛けソファ、3人掛けソファ、ラウンジチェアなど、様々な家具を組み合わせてレイアウトを考えることができます。
更にソファの前に置くテーブルは、「無し」「コーヒーカップ1個が置けるコンパクトサイズ」など、たくさんの選択肢があります。
このように、家具のサイズとレイアウトに融通が効くため、リビングを一番最後に考えます。(「このソファを置く」とサイズが決まってる場合を除く)
今回のようにペースに余裕があるLDKの場合は、リビングにしわ寄せと言っても、一般的なソファを置くスペースがあり、テレビとソファの距離も適切です。ソファとメディアボードの間に、大きなテーブルを置かなければ、人が通れるスペースも確保できます。
掃き出し窓が一番奥にある為、キッチン・ダイニング・リビングの全てが明るくなるレイアウトですが、「バスルーム・洗面」と「キッチン・ダイニング」の間に4.5帖のスペースが余っています。
この4.5帖の余った場所に「ワークスペースを作る」「収納を作る」「キッズエリアにする」などの方法もありますが、「バスルーム・洗面への通路にもなること」「リビングダイニングから丸見えであること」を踏まえると、キッチンエリアとダイニングエリアを半時計周りに90度回転させて、横長リビングに変え、リビングを広げた方が良さそうな気がします。
横長リビングってどんな間取り?
横長リビングとは、対面キッチンの前にダイニング、その隣にリビングがあるL型のレイアウトです。
一旦、縦長リビングで計画していた間取りのうち、キッチンエリアとダイニングエリアを回転させて、横長リビングにします。
間取りの間口は同じですが、縦長リビングの「キッチンエリア」「ダイニングエリア」「リビングエリア」の3つから、「ダイニングエリア」と「リビングエリア」の2つになるので、キッチンエリアに取られていた面積をリビングにプラスすることができ、リビングが広々とした雰囲気になります。
縦長リビングの面積取りの手順で「キッチンエリア」と「ダイニングエリア」に必要な面積は既に出ているので、そのまま応用し、壁に沿ってキッチンのレイアウトを少しだけ変えました。
振り分けは、キッチンエリアが405×180cm+70×360cmで9.81㎡(約6帖)、ダイニングエリアが360×290cmで10.44㎡(約6.4帖)、リビングエリアが360×270cm+315×90cmで12.555㎡(約7.7帖)です。
各エリアの周りには、人が通れる十分なスペースを確保し、他の部屋との動線も考えながら家具をレイアウト。
この間取りの場合は、先に考えた縦長リビングよりも、横長リビングの方が良いとなりました。
縦長リビングと横長リビングの比較
いかがでしたか。
キッチンを含めたレイアウトを一から考えることができる場合、「縦長リビング」「横長リビング」は「長い方の壁がどの程度あるか」が基準になります。
対面キッチンの場合、キッチンの背中側にある食器収納の後ろの壁から、キッチン前の腰壁までは225cm必要です。
「長い方の壁の長さから225cm引いた残りで、ダイニングとリビングを並べることができるか」を考えることから始めます。
例えば、ダイニングに6帖、リビングに8帖欲しい場合は、それぞれの壁の長さは270cm(225cm)と360cmです。これに対面キッチンに必要な奥行き225cmを足すと、最低でも810cm。
これに満たない長さだった場合、レイアウトを横長リビングに変えます。
しかしながら横長リビングの場合でも、対面キッチンに必要な225cmは変わらない為、横長リビングにしてもダイニングに必要な面積を取ることができない場合は、思い切ってキッチンを壁付けにする方法もあります。
この辺りのリビングレイアウトの考え方は、次の機会に解説しましょう。