トイレや廊下に海外風のモールディング腰壁をDIYしたインテリアを最近、インスタグラムでよく見かけるようになりました。
このモールディング腰壁の作り方については「プロが伝授!おしゃれな腰壁インテリアの作り方&厳選38実例」で少しだけ解説したのですが、つい最近、携わった案件で「設計時にはなかったモールディング腰壁をつける」という事案が発生し、「框部が平らなデザイン」と「框部が凹んだデザイン」の両方のモールディング腰壁を施工することになりました。
「モールディング腰壁について、もっと詳しく知りたい」という方のために、この案件を使って
- どのようなプランにしたのか
- 腰壁デザインの考え方
- 腰壁に使った材料
- 塗装前後の施工写真
などを紹介します。
クラシック調・エレガント調・アンティーク調など海外風の本格的なモールディング腰壁の作り方について解説していきましょう。
腰壁やモールディングを完成した壁につける場合は、ドア枠・引戸枠の「ちり」「みつけ」に注意
ドア枠や引戸枠は、一般的に壁面より少しだけ前後に出して納めてあります。
一方、腰壁は、壁面にベニヤ板やモールディングを重ねるようにして貼って凹凸を作っていきます。
凸凹が大きい方が豪華な腰壁になりますが、ドア枠や引戸枠の「ちり」「みつけ」がどの程度壁面より出ているかによって、「腰壁を付けたがドア枠よりも腰壁の方が出てしまう」という現象が起きてしまいます。
壁面+ドア枠・引戸枠の「ちり」と「みつけ」
まっすぐな壁に腰壁・モールディングをつける場合は、「ちり」と腰壁が重なります。
コーナーにあるドア枠・引戸枠の「ちり」と「みつけ」
コーナー部は枠の「みつけ」と腰壁が重なります。
※床付近まで窓がある掃き出し窓(テラス窓)も窓枠の「ちり」「みつけ」に注意が必要です。
ドア枠・引戸枠の「ちり」「みつけ」が壁から1cm以下の場合は「平らなデザインのモールディング腰壁」がおすすめ
腰壁やモールディングには厚みがあります。
ドア枠や引戸枠の「みつけ」や「ちり」は、壁面から大きく出す必要がない為、「ほんの少し壁より出ている」程度で取り付けるのが一般的です。
「みつけ」や「ちり」が少ない空間では、壁下地の上に、厚みの薄いベニヤ板を貼り、上部をエレガントなチェアレール、下部を巾木、間にモールディングを納めると壁面からモールディングの出っ張りも少ない美しいデザインのクラシカルな腰壁(このページでは「平らなデザインのモールディング腰壁」と呼びます)を作ることができます。
※壁(クロス貼壁)に直接、モールディングを貼り付けて腰壁風にする方法もありますが、この方法はデザイン性に劣るのと少し安っぽい印象がする為、割愛します。
平らなデザインのモールディング腰壁の作り方
平らなデザインのモールディング腰壁は「ドア枠や引戸枠よりもモールディングが出ない」ように材料を厳選して選ぶのがポイントです。
ドア枠・引戸枠の「みつけ」と「ちり」を10mm程度。腰壁の高さを3×6(915×1825mm)のベニヤ板(塗装するのでシナベニヤ)をカットせずに使う方向でデザインを考えます。
工程①厚み5mm以上10mm以下の巾木を取り付ける
- 巾木はある程度高さがある方が豪華に見えます。
- 巾木上部は、平らな部分が4mm以上あるデザインがベストです。(上にシナベニヤを乗せる為)
工程②巾木の上に4mm厚のシナベニヤを乗せる
- シナベニヤは柔らかく美しい風合いの木目で、塗装向きのベニヤ板です。
- 海外のモールディング腰壁は、マットなホワイトやマットなブラックなど、パネルっぽいデザインのものが多い為、仕上げに塗装することを想定して、シナベニヤを使います。
工程③シナベニヤの上部に厚み5mm以上10mm以下の腰見切りを取り付ける
- 腰見切りの高さは、巾木やあとから取り付けるモール部とのバランスが取れる高さにします。
- シナベニヤの上にシナベニヤよりも厚い腰見切りを乗せることで、シナベニアの小口を隠す役割も果たします。
- 上下対象のデザインのモールディングを乗せると、豪華な印象がアップして見えます。
工程④巾木と腰見切りの間の空間に、モールディングを使って四角い枠を作る
- 壁の幅を測り、モールディングで作る四角の部分、四角と四角の間が均等になるように割付を考えます。
- モールディングで作る腰壁部に何か物をつける予定がある場合は、モールディングと干渉しないようにデザインします。
平らなデザインのモールディング腰壁を美しく見せるコツ
- 四角い枠を作るモールディングに、ペタンとしたデザインを選ばない。
- 四角い枠を作るモールディングのDとHは同じサイズにせず、D<Hとする。
DとHが大きなモールディングを取り付ける方法もありますが、DとHが大きなモールディングを取り付けてしまうと、ドア枠・引戸枠より飛び出てしまい、バランスが悪く見えます。
「薄い板を貼っただけ」感のある安っぽいデザインになってしまう。
ドア枠・引戸枠より飛び出ない大きさは9mm以下。9×9mmのモールディングは、細い角材を貼り付けたような腰壁になり、豪華さに欠けます。
Dをドア枠・引戸枠の「みつけ」「ちり」と同じ9mm程度にし、Hを高いデザインにすると正面から見た時の迫力と豪華さが違います。
工程⑤モールディング腰壁を好きな色で塗装する
- 赤丸部分は、凸凹を表現する為、段差の大きいものを選ぶ。
- 青丸部分は、フラット面が少なく凸凹のい多いデザインを選ぶ。
凸凹を多く作ることで、同じ色で塗装したあと美しく見えます。
- 腰壁部:シナベニヤ4mm厚
- 巾木 10×90mm:R・dot・S キューモールKM-1322
- 腰見切 10×40mm:R・dot・S キューモールKM-1247
- モールディング部 9×30mm:R・dot・S キューモールKM-1249
平らなデザインのモールディング腰壁のデザインとインテリア実例
ベニヤ板+巾木+腰見切
「工程④巾木と腰見切りの間の空間に、モールディングを使って四角い枠を作る」を省くと下記のようなインテリアになります。
ミディアムブラウンのフローリングのダイニングに、ホワイトの巾木・ホワイトの腰見切・ホワイトの腰見切を組み合わせた背の高い腰壁をコーディネート。
腰壁部はベージュ。巾木の上に、もう1本、ホワイトのモールディングを取り付けて、豪華な印象をアップ。床に、ネイビー×くすんだ水色の太いストライプ柄のラグを敷き、ミディアムブラウンのヴィンテージな木製長方形ダイニングテーブル、ミディアムブラウンの木製脚とホワイトの座面を組み合わせたイームズシェルチェア、アンティークデザインのホワイトの木製チェアをレイアウト。腰壁の上に、濃いめのグレーの壁紙を貼ってアクセントをつけたインテリア。
少し薄いミディアムブラウンのフローリングのダイニングキッチンに、ホワイトの巾木・ホワイトの腰見切を組み合わせた腰壁をコーディネート。
腰壁部はネイビー。腰壁の上は、白っぽいベージュの壁紙。キッチンとダイニングチェアをアンティークデザインにして、クラシックな印象をアップしたインテリア。
ダークブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトの巾木・ホワイトの腰見切を組み合わせた背が低めの腰壁をコーディネート。
腰壁部はホワイト。腰壁の上は、青みがかった薄めのグレーの壁紙。グレーの2人掛けソファ、ブラック×ダークグレー×ホワイトの幾何学模様のラグ、ブラックの楕円形コーヒーテーブル、ホワイト×ゴールドのエレガントなサイドボードをレイアウト。天井から、シャンデリア風のペンダントランプを1灯ハンギング。高級感とフェミニンな印象のインテリア。
羽目板+巾木+腰見切
本物の木を使った無塗装のものや樹脂化粧シートを上に貼ったものなどがあります。
・無垢 羽目板(塗装品)の例:https://www.woodone.co.jp/product/item/housing/wall_hameita/
・樹脂化粧シートの羽目板の例:https://sumai.panasonic.jp/interior/customparts/#hameita
ナチュラルブラウンのフローリングのダイニングに、暗いグリーンの羽目板+巾木+腰見切をコーディネート。
腰壁上部に、濃いめの赤みがかったベージュの壁紙を貼り、薄めのミディアムブラウンの木製長方形ダイニングテーブルをレイアウト。テーブルの周りに、テーブルと同じ薄めのミディアムブラウンの木とグリーンの座クッションを組み合わせたチェアを4脚配置。腰壁の上に、昆虫のアートを8枚、田の字に飾って自然を感じる空間を演出したインテリア。
ダークブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトの羽目板+巾木+腰見切をコーディネート。
腰壁上部に、薄いグリーンの壁紙を貼り、床に薄いブラウンのラグを敷き、腰壁を背に、アイボリーの2人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、ミディアムブラウンの木製長方形コーヒーテーブルを配置。テーブルランプのシェードとクッションでターコイズブルーを足して、爽やかな印象をアップしたインテリア。
ミディアムブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトの羽目板+巾木+腰見切をコーディネート。
腰壁上部に、ベージュの壁紙を貼り、床に、くすんだブルー×グレイッシュな薄いグリーンのレトロな幾何学模様のラグを敷き、腰壁を背に、ホワイトの3人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、ブラウン金属脚とガラス天板を組み合わせたアンティークデザインの長方形コーヒーテーブルを配置。腰壁の上に、ヴィンテージな肖像画を2枚飾って、古臭さを足したインテリア。
ミディアムブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトの羽目板+巾木+腰見切をコーディネート。
腰壁上部に、グレーの壁紙を貼り、床に、暗く赤みがかったグレーのラグを敷き、腰窓を背に、濃いブラウンの3人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、ブラックの木とガラス天板を組み合わせた長方形コーヒーテーブルを配置。ソファ側面の腰壁の上に、イエロー×暗いイエローの油絵を飾ってアクセントカラーを加えたインテリア。
ナチュラルブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトの背が高めの羽目板+巾木+腰見切をコーディネート。
腰壁上部に、グレージュの壁紙を貼り、床に、グレー×ベージュ×アイボリーの幾何学模様のラグを敷き、腰窓を背に、ブラウンレザーの3人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、薄めのミディアムブラウンの木製長方形コーヒーテーブル、ソファと対面に、薄めのベージュのファブリック製アームチェアを2脚、ハの字に配置。暖かな印象のリラックス感のあるインテリア。
ベニヤ板+巾木+腰見切+モールディング
黒っぽいダークブラウンのフローリングのダイニングに、スモーキーなグリーンのベニヤ板+巾木+腰見切+モールディング腰壁をコーディネート。
腰壁の上に、薄めのブラウン×緑がかったグレーのレトロなパターン柄の壁紙を貼り、床に、濃いベージュ×ライトグレーのクラシカルなパターン柄の大きなラグを敷き、ダークブラウンの木製長方形ダイニングテーブル、ダークブラウンの木とダークグレーのファブリックを組み合わせたチェアをレイアウト。天井の真上に、シャンデリアを1灯ハンギング。壁紙の一部の色で腰壁を塗装して、まとまりのある空間を演出したインテリア。
ダークブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトのベニヤ板+巾木+腰見切+縦長デザインのモールディング腰壁をコーディネート。
腰壁の上に、薄いブラウンの木目調の壁紙を貼り、床にベージュのラグを敷き、スモーキーな薄い紫の2人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、スモーキーな薄めのブラウンの丸型コーヒーテーブル、ソファとL字に、ゴールド×ブラウンレザーのラウンジチェア2脚を配置。木目や茶色を多く使った空間にホワイトの腰壁を組み合わせて、すっきり感と清潔感をアップしたインテリア。
スモーキーなダークブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトのベニヤ板+巾木+腰見切+横長デザインのモールディング腰壁をコーディネート。
腰壁の上に、白っぽいグレーの壁紙を貼り、床にネイビー×薄いブルーのパターン柄のラグを敷き、暗めのターコイズブルーの2人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、ガラス製丸角長方形コーヒーテーブルを配置。クラシカルな内装とカジュアル感のあるソファを組み合わせたセンスのあるインテリア。
ミディアムブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトのベニヤ板+巾木+腰見切+縦長デザインのモールディング腰壁をコーディネート。
腰壁の上に、グレーの壁紙を貼り、床にグレーのラグを敷き、グレーの3人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、細いブラック金属脚とホワイト天板を組み合わせたシンプルな正方形コーヒーテーブル、ミディアムブラウンの木製脚とブラック天板を組み合わせた丸型コーヒーテーブルを配置。北欧スタイルにクラシックな腰壁を取り入れたインテリア。
ミディアムブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトのベニヤ板+巾木+腰見切+モールディング腰壁をコーディネート。
腰壁の上に、黄みがかった薄いグレーの壁紙を貼り、床にグレーのラグを敷き、白っぽいグレーの2人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、明るめのブラウンレザーのヴィンテージなトランク型長方形テーブル、ソファと対面に、ブラック×ホワイトの個性的な幾何学模様のファブリックを使ったアームチェアを配置。薄めのグレーを多く取り入れて上品な空間を演出したインテリア。
ナチュラルブラウンのヘリンボーン床のリビングに、暗いグレーのベニヤ板+巾木+腰見切+横長デザインのモールディング腰壁をコーディネート。
腰壁の上に、ホワイトの壁紙を貼り、ダークブラウンレザーの3人掛けチェスターフィールドソファをレイアウト。ソファと対面に、スモーキーなナチュラルブラウンの木とホワイト扉を組み合わせたヴィンテージなテレビボードをレイアウト。クラシックとヴィンテージをミックスした、かっこいいインテリア。
暗めのミディアムブラウンのパーケットフローリングのリビングに、ホワイトのベニヤ板+巾木+腰見切+横長デザインのモールディング腰壁をコーディネート。
腰壁の上に、白っぽいベージュの壁紙を貼り、床にホワイトの小さめのラグを敷き、ベージュの寝椅子付き2人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、ホワイトの石みたいな脚とガラス天板を組み合わせた楕円形コーヒーテーブル、ソファと対面にホワイト鏡面のモダンなデザインのテレビボードを配置。カーテンもクリーム色にして、開放感のある空間を演出したインテリア。
ナチュラルブラウンのフローリングのリビングに、ホワイトのベニヤ板+巾木+腰見切+縦長デザインのモールディング腰壁をコーディネート。
腰壁の上に、薄いグレーの壁紙を貼り、床にグレーの大きめの厚手のラグを敷き、グレーの寝椅子付き2人掛けフロアソファをレイアウト。ソファの前に、ゴールド金属脚とブラック×グレーの大理石調天板を組み合わせた丸型コーヒーテーブルを配置。ホワイトと薄めのグレーだけでまとめた、上品で高級感のあるインテリア。
天井付近まであるモールディング壁
ミディアムブラウンのフローリングのリビングに、天井付近まであるベージュのモールディング壁をコーディネート。
床に、ブラックの大きな菱形模様のホワイトのラグを敷き、キャメルレザーの3人掛けソファをレイアウト。ソファの前に、ホワイトのシンプルな長方形コーヒーテーブルを配置。ナチュラルとクラシックをミックスした北欧スタイルのインテリア。
スモーキーなナチュラルブラウンのヘリンボーン床のリビングに、天井まであるホワイトのモールディング壁をコーディネート。
床に、グレー×ブラウンのヴィンテージなラグを敷き、グレーの2人掛けソファ、ゴールド金属の柵みたいなデザインの脚とブラックガラス天板を組み合わせた丸型コーヒーテーブル2台、シルバー金属脚とオレンジのファブリック製座面を組み合わせた回転式アームチェア2脚をレイアウト。窓周りの壁に、ブラックの壁紙をプラス。モダンとクラシックをミックスした、おしゃれなインテリア。
グレーの床のリビングに、天井付近まであるクリーム色のモールディング壁をコーディネート。
上下のモールディングの間に、ホワイトの大きな腰見切をプラス。オフホワイト×グレーの掠れたデザインのラグを敷き、オフホワイトの3人掛けソファ、ブラック脚とダークブラウン天板を組み合わせた丸型コーヒーテーブル、グレーのファブリック製アームチェア2脚をレイアウト。クラシックデザインの家具で揃えたヨーロピアンスタイルのインテリア。
既にドアや窓枠がついている部屋に、DIYでモールディングを取り付ける時にも使える「モールディング腰壁(凸型腰壁)の作り方」を図や実例を使って解説しましたが、参考になったでしょうか。
筆者は、5年ほど前からモールディング腰壁を何回かデザインして施工しているのですが、「モールディングが小さすぎて貧弱に見えてしまう。」「割付を間違えて壁面に取り付けるはずのアイテムをつけることができない。」「思ったほどの凹凸がない。」など数々の失敗をしてきました。
今回紹介したデザインは、完全版とも言える成功例です。
最大のポイントは「モールディングのサイズをD<Hにすること」です。モールディングはサイズが大きいほど値段が高くなる傾向にあるのですが、予算を
けちらずに、見栄えのするデザインを選ぶようにすると美しい腰壁が完成します。