インテリアテイストには、さまざまな種類がありますが、筆者が提案業務をする中で、一番人気なのが、北欧インテリアです。
北欧インテリアについては、北欧インテリアのコツ-内装色とソファや家具の色だけで作る北欧スタイルで初歩的なコーディネートの仕方を解説していますが、他のインテリアテイストと圧倒的に違うのは、「ナチュラル・温もり・ひんやり」の3つの要素を同時に同じ空間に入れる必要があるところです。
このうち“ひんやり感”は、使い方を間違えると、空間全体が冷たい印象になってしまいがちです。
北欧インテリアをイチからコーディネートする場合で温かみを取り入れたい時、冷たい印象の北欧インテリアに温かみを出したい時の2パターンに使える“温かみ”の取り入れ方4つを実例も交えながら紹介していきましょう。
ベースカラーのホワイトをベージュ系にする
「北欧インテリアにほんのりとした温もりを出す」の最初のコツは、「ベースカラーの床と壁に温もりのある色を使う」です。(※これは、新築やリフォーム&リノベーションの時に使えるコツなので、内装を変えることができない場合はスルーしてください。)
インテリアはさまざまな色で成り立っています。
これまでインテリアの色について無関心だった方は、一度、室内の色の構成について考えてみましょう。
特に指定をしていない場合は、床は木目が見えるフローリングで壁と天井にはホワイト系の壁紙が貼ることがほとんどです。
このような内装を筆者は「無難系」と呼んでいますが、無難系の内装は、ありきたりな印象を受けるものの、「どんな色を持ってきても合う」「どんなインテリアにしても馴染む」といったコーディネートのしやすさがあります。
フローリング・壁・天井の色は、インテリアの中で“ベースカラー”と呼ばれる部分になります。

ベースカラーは、空間の70%を占める為、この場所に温もりのある素材を意識して選ぶだけで、温かみのあるインテリアになります。
床は、フローリングを使うのがほとんどです。フローリングは茶系のものが一般的なので、さほど気にする必要はありませんが、黒っぽい暗い茶系・白っぽいナチュラル系の茶色・グレー系のフローリングは、温もりよりも冷たさの方が勝っている空間を生んでしまう場合もあるので注意しましょう。
ホワイト扉とナチュラルブラウンの木目パネルを組み合わせた壁付I型キッチン、ナチュラルブラウンの木目のカウンターテーブル、ホワイトの丸型ダイニングテーブル、茶色の木製チェアをレイアウト。壁紙は薄いグレー。木目はあるものの、ホワイトや薄いグレーの面積が多いため、冷たい印象。
ソファの下に、白っぽいグレーのラグを敷き、濃い茶色の木目の楕円形コーヒーテーブルをレイアウト。ソファと対面に、グレーのパーソナルソファ、ホワイトのテレビボードを配置。壁紙・ペンダントライト・収納家具はホワイト。暗い茶色のフローリングは、温かみよりも高級感を出したい時におすすめの色です。
ソファの前に、黒っぽいグレー×ホワイトのシェブロン柄のラグを敷き、ソファと対面に、濃い茶色の木目のテレビボードをレイアウト。床と壁が白っぽく、家具の木目が黒っぽい為、冷たい印象。
ソファの下に、明るいベージュのラグを敷き、大きさと高さの違うブラックの丸型テーブルを2台レイアウト。テレビボードは、ホワイトのキャビネットにグレー扉を組み合わせたデザイン。全体的に白っぽく、開放感はあるものの、白っぽい面積が多い為、冷たい印象。
壁は、ビニルクロスを使うのがほとんどです。ホワイト系の壁紙には、真っ白・グレーっぽいホワイト・ベージュっぽいホワイトがあります。真っ白・グレーっぽいホワイトよりもベージュっぽいホワイトの方が温もりのある空間になります。
(サンゲツ壁紙サンプル帳「石塗り」抜粋:https://contents.sangetsu.co.jp/digital_book/reserve22/)
壁紙の本当の色は、パソコンやスマホから見る画像だけではわかりません。サンプルを取り寄せて、実物を見て色を決めましょう。
ベッドリネンをホワイト&スモーキーな薄めのグリーンでまとめ、ベッドの足元に、ホワイト扉のキャビネットとブラウンの木目天板を組み合わせたサイドボードをレイアウト。ブラケットランプ・テーブルランプ・カーテン・ミラーフレームを清潔感のあるホワイトで統一。壁面に温もりのあるベージュ色の壁紙を使うことでリラックス感のある空間を演出。
ホワイトの丸型テーブル、ホワイト金属脚とナチュラルブラウンの木目キャビネットを組み合わせたテレビボードをレイアウト。壁紙が薄いグレーな為、冷たい印象を受ける空間。
木の色を多く取り入れる
「北欧インテリアにほんのりとした温もりを出す」の2番目のコツは、「木の色を多く取り入れる」です。
室内には、床や建具、収納の扉などに、茶系の木目が使われています。この部分は、最初から室内に存在し、あとから色や見た目を変えることができません。
床面が多く見え、室内に大型の木目扉のクローゼットがある場合は、それだけで温もりがアップして見えますが、ほとんどのお部屋は「木目が見えるのが床面と幅80cmほどの建具だけ」ではないでしょうか。
木の色は、インテリアに親しみや温もりを演出します。
インテリアで木の色を使える部分を面積の大きな場所から順に紹介していくと
- ダイニングテーブルの天板・リビングテーブルの天板・テレビボード・収納家具
- ゴミ箱・時計・絵やポスターを飾るための額縁
- ソファの脚やテーブルの脚・椅子の脚(座面が木以外の場合)・照明器具の脚やシェード
などがあります。
木の色は、フローリングと同様に以下のようなものがあり
ダーク系の茶色・白っぽいナチュラル系の茶色・グレー系の茶色は、温もりよりも冷たさの方が勝って見える場合もあるので注意しましょう。
グレーのファブリック製座面を白っぽい茶色の木製脚を組み合わせたチェアをレイアウト。壁紙は白っぽいグレー。家具の木目が白っぽいので、冷たい印象。
壁を背に、ホワイトキャビネットと黒っぽく、くすんだブラウンの木目扉を組み合わせたサイドボードをレイアウト。温もりが少なめの木製家具ばかりなので、冷たい印象。
さまざまな明るさ&鮮やかさのグリーン系の座面と明るめのブラウンの木製脚を組み合わせたチェアをレイアウト。掃き出し窓横の壁に、ブラウンの木目のサイドボードを配置。ポスター用の額縁も明るめのブラウンの木目にして心地良い空間を演出。
テーブルの下に、黒の細い線×ライトグレーの幾何学模様のラグを敷き、真っ黒な木製スツール、茶色の木とベージュのファブリック製座面を組み合わせたベンチをレイアウト。梁下に、奥行きの浅いブラウンの木製ウォールシェルフをハンギング。温もりのある茶色の木目に、ブラックのポイントを加えて、ナチュラルでメリハリのある空間を演出。
ナチュラルブラウンのフローリングのLDKに、フローリングと明るさが同じ、ナチュラルブラウンの木目扉のII型対面キッチン、木製丸型ダイニングテーブル、曲線デザインの木製チェア、木製長方形リビングテーブルをコーディネート。
白っぽいグレージュのラグと箱みたいなデザインの組み合わせ方のフロアコーナーソファをレイアウト。木目の面積を多くして、ナチュラルで温もりのある空間を演出。
ソファの前に、高さと大きさが違う2種類のダークブラウンの葉っぱのようなデザインの木製コーヒーテーブルをレイアウト。ソファ正面の壁に、ホワイトキャビネットとダークブラウンの木目扉を組み合わせたハンギングデザインのテレビボードと木製ウォールシェルフ、窓がある壁のコーナーにダークブラウンの木目のサイドボードを配置。家具色を床色より濃くしてシックな印象をアップ。
メインカラーに暖色を使う
「北欧インテリアにほんのりとした温もりを出す」の3番目のコツは、「メインカラーに暖色を使う」です。


メインカラーは、「テーブルや収納家具などの木目(木の色)をメインにコーディネートする部分(①)」と「ソファやカーテンやラグといったファブリック(布)をメインにコーディネートする部分(②)」の2箇所に分けることができます。
①については「2.木の色を多く取り入れる」で詳しく解説したので、ここでは②のソファ・ラグ・カーテンについて説明します。
- ソファ:メイン空間の顔となる色
- ラグ:床と馴染む色
- カーテン:壁と馴染む色
で色決めするのが基本です。
ラグとカーテンについて、詳しく説明します。
ラグは「床と馴染む色」、カーテンは「壁と馴染む色」が基本なので「1.ベースカラーのホワイトをベージュ系にする」で説明した色合いを基準に考えると、ラグの色は茶色の木目に馴染むベージュ系、カーテンの色はベージュ系のホワイトに馴染む白っぽいベージュ系になります。
最後は、リビングの顔であるソファの色です。
北欧インテリアに温かみを出す場合、「ソファの色も暖色で」となってしまいがちですが、上記までのカラーコーディネートで、空間全体が既に温かみのある配色になっています。
なので、ソファの色に寒色や冷たさの出るグレー系を使っても、インテリア全体を見た時に「温かみがない」とはなりません。
ソファの前に、白っぽいベージュのラグを敷き、ブラウンの木目の丸型コーヒーテーブルをレイアウト。壁紙を白っぽいベージュにして、茶色の木目のオープンラックを装飾っぽく飾り、寒々しく感じない空間を演出。
ソファの前に、グレーで規則正しい円のような模様を描いたラグを敷き、床色より濃いブラウンの木目の三角形コーヒーテーブルをレイアウト。ソファと対面に、コーヒーテーブルと同じ明るさのブラウンの木目のサイドテーブルを配置。吐き出し窓横の狭い壁に、ブラウンの木目の3段ウォールシェルフをハンギング。壁紙がホワイト、ソファが寒色でありながら、温かみを感じ、リラックスできそうな空間を演出したインテリア。
ソファの下に、ベージュ×ブラウン×暗いブルーのラグを敷き、ブラウンの木目の長方形コーヒーテーブルをレイアウト。ソファ正面の壁は、水色のアクセントクロスと水色のタイル。残りの壁は、ベージュ。水色の壁面に、ブラウンの木目の板を取り付けて、寒々しく感じない空間を演出。
コーヒーテーブルをブラウンの木目にして、ラグやアートで赤みが強めのベージュやブラウンを足して、くつろぎ感のある空間を演出。
ソファの前に、ブラックの線×ベージュの規則正しいパターン柄のラグを敷き、ブラック金属脚とナチュラルブラウンの木製天板を組み合わせた長方形コーヒーテーブルをレイアウト。フロアランプの脚とサイドテーブルをナチュラルブラウンの木目調、壁紙を白っぽいベージュにして、温かみのある空間を演出。
また、グリーン系のソファは、北欧インテリアに欠かせないナチュラルな印象を演出する為、おすすめです。
明るめのブラウンの木目の丸型リビングテーブルやカウンター(ベンチ一体型)、オープンシェルフと組み合わせてナチュラルな空間を演出。
暖色のアクセントカラーを使う
「北欧インテリアにほんのりとした温もりを出す」の4番目のコツは、「暖色のアクセントカラーを使う」です。
アクセントカラーは、インテリアを作る時、最後に加える色で、クッション・アートやポスター・小ぶりな照明器具のシェード・観葉植物や花を飾る花瓶などで足していきます。
アクセントカラーは、出来るだけ目立つ色を使うのがおしゃれなインテリアを作るためのセオリーですが、北欧インテリアの場合は、「空間に馴染む、ぼんやりとした色」でも問題ありません。
特に、土や木を意識したブラウン系のアクセントカラーは、インテリア全体に温かみとくつろぎ感をもたらします。
グリーンも北欧インテリアに欠かせないナチュラル感を演出する色なので、観葉植物で取り入れるとリラックス感のあるインテリアになります。
コーディネートの仕方を一歩間違うとひんやりと冷たい空間になってしまいがちな北欧インテリアに温かみを出すコツを4つ紹介しましたが、参考になったでしょうか。
このコラムでは、温かみだけに注目して色の加え方を中心に解説しましたが、4つのコツを全部取り入れると、生暖かい印象の北欧インテリアになってしまいます。
北欧インテリアは、「冷たさと温もりの両方を取り入れた寒暖のバランスが取れた空間」であることが第一条件だと筆者は思っています。温もりに偏り過ぎないように、寒色のアイテムを少しだけ加えるのがポイントです。