根強い人気の北欧インテリア。
筆者の元に、相談がある案件の8割が「北欧っぽくしたいんです」「北欧カラーでコーディネートしたいんです」といった内容です。
これらの相談を聞いていて感じるのが
- 木目の家具に合いそう
- ゴチャゴチャと内装に手を加えなくても実現しそう
- 狭い空間でも居心地良く見えそう
といったようなお施主様の心理状態です。
さて、インテリアにさほど興味がない方でも、何となく耳にしたことがあるであろう北欧スタイルですが、北欧デザインのテーブルや北欧デザインのソファやチェア、北欧プリントのクッションを買ったからと言って北欧インテリアが実現するわけではありません。
北欧に限らず、心地よく感じるインテリアコーディネートの基本は、室内にある全てのものを違和感なくマッチさせることです。
北欧デザインの家具や雑貨を集めたからと言って、北欧インテリアにならない理由は、元々ある空間の床の色や壁の色、ドアの色と新しく購入した家具の色やデザインがマッチしていないからです。
北欧インテリアを作りたい時に「どんな色」「どんな素材」「どんなデザイン」を選べばよいかの基本を入門編として紹介しますので、おしゃれな空間作りのヒントにして下さい。
※プリント柄やパターン柄を入れるとより北欧らしくなるのですが、これらを入れた北欧インテリアは「色」と「柄」の2つの要素が加わり、複雑になりがちで、初心者向きではない為、色だけを中心に解説していきます。
柄を取り入れた北欧インテリアは下記参照。
配色の基本
心地良く感じる空間は、目に優しい色や慣れ親しんだ色を配色した空間です。
北欧インテリアでは、自然界にある色を配色していきます。
土・木・植物・空・水を連想させる色。
その中でも、淡い色・鈍い色(彩度や明度が低い色)・灰みがかった色(彩度が低い色)を中心に使います。
①内装色(ベースカラー)を決める
ベースカラーとは、空間の中で70%を占める基本となる配色のことです。
①-①ベースカラーをイチから決めることができる場合
床、壁、天井、ドアの色がこれに当たり、北欧インテリアでは、薄い茶色のフローリングに、ベージュ・薄いグレー・ホワイトの壁や天井を組み合わせた内装が基本です。
薄い茶色の綺麗な木目のフローリングとホワイトの壁・天井の北欧スタイルのLDK。
薄い茶色の板っぽいデザインのフローリングとホワイトの壁・天井の北欧スタイルのLDK。
ナチュラルな木目の薄めの茶色のフローリングとベージュの壁、ホワイトの壁、白っぽいグレーの天井を組み合わせた北欧スタイルのリビング。
①-②ベースカラーを変更できない場合
内装も含めて、イチからインテリアを作っていく場合は、上記の配色で問題ありませんが、引っ越し先の内装色が決まっていて「床・壁・天井の色を変えることができない。」「今住んでいる部屋の内装色で北欧インテリアを作りたい。」という場合は、ソファ、ラグ、カーテンなどを使って内装色を消し、北欧っぽい雰囲気を出していきます。(下の方で紹介するメインカラーの「家具」、メインカラーの「ファブリック」参照)
近年は通販で糊つきの壁紙を購入し、ご自身で壁の色を変えることができるようになっており、「全周真っ白な壁が当たり前」の時代は終焉しつつあります。また、真っ白な壁に囲まれた空間は、緊張感を生むとも言われており、壁に薄っすらと色をつけることで一層リラックスできる空間を演出することもできます。
北欧インテリアで壁紙に色をつける場合は、先述した自然を連想させる色にホワイトを混ぜた色を使うのがお薦めです。
ナチュラルブラウンのヘリンボーン床と青みがかった薄いグレーの壁紙を組み合わせた北欧スタイルのリビング。
くすんだナチュラルブラウンのフローリングと薄いピンク、灰みがかったブルー、グレイッシュな薄いグリーンの幾何学模様の壁を組み合わせた北欧スタイルのリビングダイニング。
ナチュラルブラウンの斜め張りのフローリングとホワイト×淡いグリーンの曲線パターン柄の壁紙を組み合わせた北欧スタイルのダイニング。
白っぽいナチュラルブラウンのフローリングと白っぽいグレーとくすんだベージュの幾何学模様を組み合わせた北欧スタイルのリビング。
②メインカラーを決める
メインカラーは、床・壁・天井・ドア・枠類などの既存の色とは別に、自分で足していく色で、空間の約25%程度を占めます。
リビングなら、ソファ・コーヒーテーブル・ラグ・サイドテーブル・収納・カーテンなど、家具と大きな面積のファブリックの色がメインカラーにあたります。
メインカラーは、「暖かくほっこりする」「無機質で人が住んでいない感じ」等、空間全体の印象を左右する色なので、先に「どんな雰囲気の空間にしたいか」を考えてから色を選定していくと効率よく進みます。
また、メインカラーに2種類以上の色を選ぶ時は
- A.似た色同士を使うと落ち着く空間
- B.正反対の色を使うとメリハリのある空間
になります。北欧インテリアの場合は、Aの場合もBの場合も鮮やかな色やハッキリと目立つ色よりも最初の方にカラーサンプルで挙げた「自然界にある色」を中心に選定していきましょう。
グレイッシュなベージュのソファとグレイッシュなベージュのラグを組み合わせた北欧スタイルのリビング。
濃いブラウンのソファと薄いベージュのラグを組み合わせた北欧スタイルのリビング。
薄いグレーのソファとグレーのラグを組み合わせた北欧スタイルのリビング。
くすんだブルーのソファと薄い茶色のラグを組み合わせた北欧スタイルのリビング。
グレーのソファと薄いベージュ×ブラウンのラグを組み合わせた北欧スタイルのリビング。
暗いブラウンのソファ、ベージュのラグ、グレイッシュな薄いグリーンのオットマンテーブルを組み合わせた北欧スタイルのリビング。
②-①家具の色を決める
北欧インテリアにマッチするのは、「薄い茶色の木目調の家具」や「白っぽい茶色の木目調の家具」です。
薄い茶色に濃い茶色の木目が入った木製ダイニングテーブルと木製ダイニングチェアをコーディネートした北欧スタイルのダイニング。
ホワイトの壁を背に、薄い茶色の木目扉のテレビボードと薄い茶色の木とホワイトレザーを組み合わせたアームチェアを並べた北欧スタイルのリビング。
テレビボード、コーヒーテーブル、ダイニングチェアをホワイト×薄い茶色の木でまとめた北欧スタイルのリビングダイニング。
くすんだ薄い茶色の木目の丸型コーヒーテーブルと薄い茶色の木目のカウンター型テレビボードを組み合わせた北欧スタイルのリビング。
暖かい印象を少なめにして、無機質さや冷たい印象を演出したい時は、薄いグレーやホワイトの家具を選びます。
コーヒーテーブル(トレイテーブル)とテレビボードをホワイトでまとめた北欧スタイルのリビング。
コーヒーテーブルをホワイト×グレー、テレビボードをホワイトでまとめた北欧スタイルのリビング。
コーヒーテーブルを白っぽいグレー、テレビボードをホワイトでまとめた北欧スタイルのリビング。
家具店や通販ページで家具を選定する際、目に留まりやすいのは濃い色です。また、濃い茶色は同じデザインの家具でも高級そうに見えます。
北欧インテリアでは「白っぽく」を常に頭に置いて家具の色を選ぶようにしましょう。
②-②ファブリックの色を決める
ソファ、ラグ、カーテンなど、インテリアには生地を使ったものが多く存在します。
生地に何個がバリエーションがある場合は、ホワイト・オフホワイト・アイボリー・ベージュ・薄い茶色・薄いグレー・白っぽい寒色・薄いグリーンのどれかを選ぶようにしましょう。
これらの色は、空間を広く見せる効果もある為、狭い部屋でも圧迫感なく空間に馴染むのが特徴です。「全体的にぼんやりとした印象」くらいが丁度良いです。ぼんやりした空間で、物足りないと感じた時は、あとで紹介する「アクセントカラー」を足せば解消できます。
生成りのナチュラルなカバーソファをコーディネートした北欧スタイルのリビング。
スモーキーな薄いブルーの3人掛けソファをコーディネートした北欧スタイルのリビング。
くすんだ薄いグリーンのパターン柄のカーテンをコーディネートした北欧スタイルのリビング。
③挿し色(アクセントカラー)を決める
挿し色(アクセントカラー)は、クッションカバーやランプシェード、アートの色やディスプレイ用の本、雑貨などで取り入れるインテリア全体の配色のうちの5%程度の色のことです。
挿し色(アクセントカラー)は濃く目立つ色を選ぶのが一般的ですが、北欧インテリアの場合は、周りに馴染む薄い色を選んでも問題ありません。
また、クッションカバーやランプシェード、雑貨などを用いずに、観葉植物を取り入れてアクセントにする方法もあります。北欧インテリアは元々自然界に存在する色をベースとした配色の空間なので、観葉植物が自然に馴染み、活き活きとした印象もプラスされるという相乗効果があります。
チェアの内側とアートのオレンジを挿し色(アクセントカラー)にした北欧スタイルのダイニング。
壁面に飾ったアートのくすんだピンクを挿し色(アクセントカラー)にした北欧スタイルのダイニング。
壁面に収納したファイルボックスの薄いイエローと観葉植物の濃いグリーンを挿し色(アクセントカラー)にした北欧スタイルのダイニング。
ブラウン系やベージュ、グレーを使ったシンプルな食器のアートを挿し色(アクセントカラー)にした北欧スタイルのリビング。
水色のクッションとアート、暗めのイエローの雑貨・鉢・クッションを挿し色(アクセントカラー)にした北欧スタイルのリビング。
鮮やかな水色の無地クッションを挿し色(アクセントカラー)にした北欧スタイルのリビング。
アートとテーブルランプの脚の暗いブルーを挿し色(アクセントカラー)にした北欧スタイルのダイニング。
鮮やかな黄色の無地クッションを挿し色(アクセントカラー)にした北欧スタイルのリビング。
照明器具の基本
照明器具には、ペンダンドランプ、シーリングランプ、フロアランプ等、取り付け位置によって様々な呼び方やデザインがあります。
照明器具の基本は、「空間を明るくするもの」ですが、テイストを前面に押し出したインテリアを作りたい時は、照明器具のデザイン・素材・器具の色を活用するのがおすすめです。
特に、内装がシンプルな北欧インテリアでは、次の3点の色や素材の照明器具が似合います。
- ナチュラル素材シェードの照明器具
- 自然界にある色(冒頭のカラーサンプル参照)のシェードの照明器具
- アクセントカラーに使えそうな色のシェードの照明器具
薄い茶色のラタンシェードの大きめのペンダントランプを1灯、ダイニングテーブルの真上に吊り下げた北欧スタイルのダイニング。
光沢のある薄いグレーの金属シェードのペンダントランプを1灯、コーヒーテーブルの真上に吊り下げた北欧スタイルのリビング。
ナチュラルブラウンの幾何学デザインの木目シェードの大きなペンダントランプを1灯コーヒーテーブルの真上に吊り下げ、グレーのファブリックシェードのフロアランプをソファの左右にコーディネートした北欧スタイルのリビング。
雑貨・小物・ディスプレイ
北欧デザインの雑貨やディスプレイは、日本でも簡単に手に入れることができます。
また、「北欧デザイン」と謳った家具を使わなくても、雑貨やアート、観葉植物の組み合わせただけで北欧らしさを演出することもできます。2点以上の雑貨・小物・ディスプレイをコーディネートした北欧インテリアを紹介していきましょう。
ナチュラル素材・華奢なデザイン・草花
ブラックの長方形サイドテーブルの上に、小さなピンクの花を入れた細いブラックの柵のようなデザインのワイヤーとホワイトの陶器を組み合わせた花瓶、小さな観葉植物を入れた薄い茶色のミニバスケット2個、薄い茶色の網籠、ブラックワイヤーの容器をディスプレイ。壁面にホワイトのフックを取り付け、ナチュラルなベージュのカゴを2個ハンギング。
配色を「ブラック」「ホワイト」「薄い茶色(ベージュ)」「グリーン」の4点に抑え、繊細なデザインを選び、ナチュラルな印象を強く前面に押し出したディスプレイ。
観葉植物・鳥の雑貨・海のアート・ナチュラルな花
ミディアムブラウンの木製ダイニングテーブルの上に、透明ガラス瓶に入れた大きな葉っぱと小鳥の置物、壁面を背にブルー×グレーのヴィンテージなアートと黒の花瓶に入れたドライフラワーをディスプレイ。
生命力を感じる植物と枯れた花を対比させるようにコーディネート。
観葉植物・花・モノトーン雑貨・モノトーンアート
ホワイトの面積が多いダイニングに、ブラックの鉢に入れた観葉植物2個、ガラス瓶に入れた小ぶりな花、ブラックのキャンドルホルダーとホワイトのキャンドル、ブラックの雑貨、ブラックの額縁に入れたシンプルなアートをディスプレイ。
存在感のあるブラックをポイントに使ったインテリア。
ブラックのヴィンテージな木製サイドボードの上に、黒、グレー、薄いブラウンの鉢に入れた観葉植物をディスプレイ。
家具上部の壁面に、壁と同じホワイトのウォールシェルフを並べ、ホワイトの鉢に入れた小さな観葉植物を等間隔に4個プラス。ウォールシェルフの上に、ブラックの木製額縁に入れた奥行感のあるモノクロアート(写真)を飾り、壁面の配色をホワイト、グレー、ブラック、薄い茶色、緑で揃えたインテリア。
観葉植物・ナチュラル雑貨・ナチュラルアート
ミディアムブラウンの木製キャビネットとホワイト扉を組み合わせたサイドボードの上に、ブラック、グレー、クリーム色の陶器、焦げ茶の木製トレイ、ホワイト×ブラックの本、グレーとベージュの雑貨をディスプレイ。
壁面に、葉っぱのアートをナチュラルブラウンの木製額縁に入れて2枚飾り、サイドボードの手前に、グリーンの鉢に入れた背の高い観葉植物をレイアウト。緑と薄い茶色を組み合わせ、ナチュラル感を演出したインテリア。
モノトーン雑貨・モノトーンアート
ミディアムブラウンの木製キャビネットとホワイト扉を組み合わせたサイドボードの上に、ブラック×ホワイトの丸型の掛け時計、ホワイト×ブラックのアルファベット看板、黒の枝を入れたグレーの花瓶、グレー×ホワイトの目覚まし時計、ホワイトの額縁に入れたホワイト×ブラックの北欧柄のポストカード、グレー×ホワイトの箱をディスプレイ。
ブラック、グレー、ホワイトだけでまとめたシンプルなインテリア。
観葉植物・ナチュラルカラーの額縁・モノトーンアート
コーナーにグレー×ホワイト×ブラックのパターン柄のラグを敷き、ミディアムブラウンの木製脚とグレーの座面を組み合わせたイームズチェア、薄い茶色の木とホワイトの座面を組み合わせたイームズシェルアームチェアをL字にコーディネート。
チェア同士の間に、茶色のバスケットを置き、グレー、ベージュ×グレー、オフホワイトのクッションを無造作にディスプレイ。窓前に観葉植物、窓と反対側の壁に、モノクロポスターを薄い茶色の木製額縁とホワイトの額縁に入れて2枚飾り、デッドスペースになりがちな部屋の隅をおしゃれにアレンジしたインテリア。
いかがでしたか。
北欧インテリアを「内装」「家具」「ファブリック」の基本的な配色の考え方から、照明器具や雑貨の使い方まで紹介しましたが、参考になったでしょうか。
このページで解説したのは、初心者でもとっつきやすい、優しい色使いのシンプルでナチュラルな印象の北欧インテリアです。アレンジを加えたり、奇抜な色を使って「もっと個性を前面に押し出した北欧インテリアを作ってみたい」という方は、下記を参考にして下さい。