インテリアコーディネートが一般家庭にも浸透しつつあると感じる昨今。
インテリア計画を進める前に知っておきたい知識をまとめました。
このページでは、ソファ・家具・ラグ・カーテンといった一般的なインテリアの配色だけでなく、DIYで内装も触れるようになった現在の時代背景に応じた配色の進め方を解説しています。
新築・リフォーム・リノベーション・DIY・引っ越しを機にした家具だけを追加する場合・今ある家具を買い替える・模様替え等、ありとあらゆる場面で使えるインテリア配色を紹介していきましょう。
①10年前と現代はインテリアの作り方の環境が違うことを知っておこう
人にとって欠かせないものに「衣食住」があります。
インテリアは、このうちの「住」に関係するものです。
「衣」のように、人が目にするものではない為、10年ほど前までは、建築やインテリアに関わる仕事をしていない限り、“インテリアにこだわる”人が少なかったように思います。
ところが、10年ほど前から徐々に、インテリアにこだわりを持つ方が増え、現状としては「こうして欲しい」「これを使って欲しい」対「お任せ」の割合は7:3くらいになっています。(※筆者への相談への割合)
10年前と言えば、ちょうど、スウェーデンのIKEAが日本に上陸した頃です。(正確には2006年)
それまで、インテリアと言えば、雑誌や教本で知識を得るか、家具ショップに足を運んで目にする程度でした。皆さんのなかで、10年以上前に引っ越しをした経験がある方は、「以前使ってた家具を持ち回り」「足りない家具はカタログ通販か商業施設のインテリアコーナーで購入」というパターンだったのではないかと推測します。
しかしながら、スマホの普及率が8割を超えている(※)今、目に入る情報量や手に入れることができるインテリアアイテムが圧倒的に増えています。(※ 総務省情報通信機器の世帯保有率の推移より)
- 検索すれば、知りたいことがすぐに見つかる(専門家に相談するまでもなく答えが見つかる)
- 建材メーカーやインテリアメーカーがコーディネート情報をサイト内で発信している(分厚いカタログや教本をわざわざ取り寄せて見る必要が無い)
- 完成したインテリア実例をSNSやインスタグラムで画像として目にすることができる(高価な写真集やインテリア雑誌を手に入れる必要が無い)
- インテリアの作り方の詳しい解説の情報や動画発信(専門家に依頼する必要が無い)
→誰でも簡単にインテリアコーディネートを目にすることができるようになった。
- 通販の普及
- 張り替えることができる壁材や床材の普及
- 100均のインテリアコーナーの充実
- 海外のユーズド家具ショップの充実
- ホームセンターのDIY製品や工具類の充実
→欲しいと思った家具やインテリアアイテムをすぐに手に入れることができるようになった。
1と2を駆使すれば、簡単なDIYでインテリアをガラリと変えることができ、インテリアの基礎知識がなくてもある程度見栄えのするおしゃれなインテリアが作れる恵まれた環境が出来上がっているのが現代です。
初めてインテリアコーディネートを考える時や10年以上前からインテリアを触っていないという場合は、この時代背景も踏まえて配色を決めていく必要があります。
②インテリア配色の基本について知っておこう
上記で述べたSNSやインスタグラムに挙がっているインテリア実例には、個性的な配色やカラフルな配色のものもありますが、ベースとなるインテリア配色の基本的な割合は、昔も今も変わりません。
これをリビングの立体パースに落とし込むと下記のようになります。
場所 | パースの色 | 全体に占める割合 | |
ベースカラー | 床・壁・天井 | ピンク | 75% |
メインカラー | ソファ・家具・ラグ・カーテン | 水色 | 25% |
アクセントカラー | クッション・鉢 | イエロー | 5% |
②-①ベースカラー(75%)について
ベースカラーは、フローリングや壁紙で配色する場所です。一昔前までは、「色を変えることができない」「色を変えることができたとしてもリフォームが必要でコストが掛かる」と言われていましたが、現在は、既存の床の上に乗せて使えるフロアタイルや貼って剥がせる壁紙等DIY向きの製品を使って色を変えることができるようになっています。
②-②メインカラー(25%)について
メインカラーは、引っ越しの時に買い揃える部分です。
大きく分けると「家具などの木製製品」「ソファ・ラグ・カーテンなどのファブリック」の2種類でそれぞれ配色を考えます。
以前は、家具の色を変えたくなった時、買い替えるしかありませんでしたが、現在では、リメイクシートを活用すれば、既存の木目の色を変えることも可能です。
木製家具は、床色と合わせるのが一般的ですが、床色と全く違う明るさの木目を使っても問題ありません。(後述します)
②-③アクセントカラー(5%)について
アクセントカラーは、ベースカラーとメインカラーでまとめた空間を挿し色として配色する場所です。クッションカバーや観葉植物用の鉢、インテリア雑貨などを活用します。色替えが簡単で比較的安く色を変えることができます。
ベースカラーのうち、床や建具の木目には流行があります。
- 1990年代:ライトブラウン・ミディアムブラウン・ダークオークの3色展開。オーク系の木目を模したデザインが主流。
- 2000年頃:オーク系に加え、メープル・チェリー・ウォールナットといった優しい風合いの木目が登場。メープルナチュラル、ダークウォールナットといったような木(木目)と色を組み合わせたカラーバリエーションが登場し、コーディネートの幅が広がる。
- 2010年頃:暗めのダークブラウンの木目調と白っぽい壁を組み合わせたモダンな内装が主流になる。
- 2020年以降:ショコラ・スモーキー等、灰色を混ぜた鮮やか過ぎない茶色の木目が登場し、コーディネートの幅がさらに広がり、高級な素材を使わなくても上質な空間を演出することが可能に。
※筆者が感じる木目の変遷です。
現在の木目には、「木目の柄」と「色」を組み合わせた様々な色柄があり、バリエーションが豊富です。暗めの茶色と言っても、黒っぽい茶色・焦げ茶・鮮やかさの少ない暗い茶色等、(提案する側も迷ってしまうほど)あります。
また、木目には、無垢材(本物の木)とプリント材(木目をプリントしたシート)の2種類があり、後者の方が安価です。一昔前は、プリント材の木目はツルンとした見た目でナンチャッテ感が強かったのですが、印刷技術の向上によって、凸凹や傷を再現したものまであり、本物に近い風合いになっています。
インターネットのコーディネート実例をヒントにして配色を真似る場合は、5年以上前のものだと既に古い場合もあるので注意しましょう。
③あなたがインテリアを作りたい場所はどれに該当?
ここまで「現時点でのインテリアを作る環境」と「インテリア配色の基本」を解説しましたが、床・壁・天井のベースカラーとなる部分の色を変えることができるか否かで、コーディネートの仕方が変わってきます。
あなたがインテリアを作りたい場所について、次の3つの中から選び、該当するコーディネートの進め方を読んで下さい。
- 【A】床・壁・天井の色をゼロから決めることができる
- 【B】床・壁・天井の色を変えることができない
- 【C】床・壁・天井の色を張り替えることができる
③-①「【A】床・壁・天井の色をゼロから決めることができる」または、「【C】床・壁・天井の色を張り替えることができる」
「A.床・壁・天井の色をゼロから決めることができる」は、新築で床材をこれから選ぶという場合、「C.床・壁・天井の色を張り替えることができる」はリフォームやDIYで床色や壁色を全て変える場合です。
(ピンクの部分の配色を考える)
同じ面積の床でも、床の色を黒っぽくするか白っぽくするかで広さが違って見えます。
- 黒っぽい床と白っぽい床では、白っぽい床にした方が「広く」見えます。
- 白っぽい壁と暗い壁では、白っぽい壁の方が「広く」見えますが、遠くに見せたい壁をわざと暗い色に配色することで奥行きを出すコーディネートの仕方もあります。
床色や壁色による広さの感じ方については、下記で詳しく解説しています。
③-②【B】床・壁・天井の色を変えることができない
床・壁・天井の色を現在のままの配色でコーディネートを進めていきます。
現在の床色に合った配色を選定するか、ラグを敷いて床色の雰囲気を変えコーディネートを進めていきましょう。
④配色に取り掛かる前にイメージを決めよう
インテリアを構成する色には、それぞれ特徴があり、組み合わせ方次第で様々な表情のインテリアを作ることができます。特にインテリアに興味が無くても、「こんな雰囲気の部屋が好き」「こんな部屋を作ってみたい」という好みがあるかと思います。
また、部屋全体の雰囲気よりも、「こんなデザイン(色)の家具を置きたい」といった具体的なインテリアアイテムを既に選定されている方もいらっしゃるでしょう。
下記の【LEVEL1】~【LEVEL3】の中から1つ選んで、どんな配色のインテリアにするか決めましょう。(【LEVEL3】が一番具体的です。)
④-①【LEVEL1】最低限のテーマを決める
「温かい雰囲気」「冷たい雰囲気」どちらにするか決める。
インテリア配色は大きく分けると「温もりのある空間を演出する配色」と「冷たい空間を演出する配色」の2種類があります。前者は、くつろぎやリラックス感のあるインテリア、後者は生活感が少なくスマートな印象のインテリアになります。
ベースカラーのうち、床に茶色の木目、壁に暖色系の壁紙を使います。全体的に暖かい雰囲気にするか、冷たい色を混ぜて、暖かい色の割合を多めにすることでも暖かい雰囲気のインテリアを作ることができます。
メインカラーには、茶色の木目家具・ベージュ系のファブリック・暖色のファブリックを使います。木目の家具を白っぽい(薄い)茶色の木目にしてしまうと冷たさが強調されてしまうので注意しましょう。アクセントカラーは、濃い暖色・鮮やかな暖色・薄い寒色・鮮やかな寒色のどれを使っても問題ありません。
メインカラーは、茶色の木目家具・ベージュ系のファブリック・暖色のファブリックを使います。木目の家具を白っぽい(薄い)茶色の木目にしてしまうと冷たさが強調されてしまうので注意しましょう。アクセントカラーは、濃い暖色・鮮やかな暖色・薄い寒色・鮮やかな寒色のどれを使っても問題ありません。
ベースカラーに白っぽい色やトレンドの木目である「スモーキー」や「ショコラ」を使います。全体的に冷たい雰囲気にするか、暖かい色を混ぜて、冷たい色の割合を多めにすることでも冷たい雰囲気のインテリアを作ることができます。
メインカラーには、「スモーキー」や「ショコラ」系の木目家具・ブラック・グレー・ホワイトの無彩色の家具・白っぽい色(ベージュ系の白っぽい色ではなくグレー系の白っぽい色)のファブリック・寒色のファブリックを使います。
メインカラーに、「スモーキー」や「ショコラ」系の木目家具・ブラック・グレー・ホワイトの無彩色の家具・白っぽい色(ベージュ系の白っぽい色ではなくグレー系の白っぽい色)のファブリック・寒色のファブリックを使います。アクセントカラーに鮮やかな暖色を取り入れるとおしゃれ感がアップして見えます。
【初心者向き】インテリア配色cool&warmと3大人気スタイル別実例
④-②【LEVEL2】ぼんやりとしたテーマを決める
「温かい・冷たい」よりもう少し具体的な以下のようなインテリアです。
- シンプル
- かっこいい
- ナチュラルな雰囲気
- 清潔感がある
- エレガント
- 生活感が無い
- 高級感がある
など、抽象的なインテリアイメージです。
床色別に11~12個の印象の違うインテリア実例を下記で紹介していますので、好みのコーディネートを見つけて下さい。
④-③【LEVEL3】踏み込んだテーマを決める
「モダンインテリア」「北欧インテリア」など、具体的にインテリアテイストを絞って配色を進めていく方法です。インテリアイメージをより具体化することで、配色選定だけでなく、「家具デザインが選定しやすくなる」といったメリットがあります。
下記から、好きなインテリアテイストを見つけ、この下にある「テイストごとの似合う配色」をヒントにしながら配色を決めていきましょう。
上記で紹介したインテリアテイストには、似合う配色があります。
「生活感の少ないモダンスタイルを目指しているのに、配色に暖かい色を選んでしまった為、無機質なインテリアにならなかった。」
「季節を通して快適な北欧スタイルを目指しているのに、冷たい色が足りず、暖かい雰囲気のインテリアになってしまった。」
「今流行のDIY向きのヴィンテージインテリアを目指しているのに、白っぽい色を多く取り入れてしまった為、かっこ良さが出なかった。」
といった失敗やチグハグ感を防ぐ上でも、“どんな色を使うと目指すインテリアスタイルを作ることができるのか”を下記を読んで把握しておきましょう。
⑤ベースカラーとメインカラーの組み合わせ18パターン
「床の色と家具の色を揃える」のが正しいとされていたのは一昔前の話です。
オープンなリビング空間のベースカラー(床の色)を3種類に分け、6パターンのメインカラー(家具の木目とソファ・ラグの色)と組み合わせたインテリアコーディネートをパースを使用して紹介していきます。
⑤-①ベースカラー:ダークブラウン系
⑤-②ベースカラー:ミディアムブラウン系
⑤-③ベースカラー:ナチュラルブラウン系
シンプルモダン・インダストリアル等、12種類のインテリアスタイルから好みの空間を選ぶことができるが、ソファやコーヒーテーブル・壁の色は変更不可。
Panasonic カラーコーディネイション(リビング)
ソファの色は、ホワイト・ベージュ・グレーの3種類から選べる。
大建工業 インテリアイメージWEB(リビング)
ソファやコーヒーテーブル、テレビボードと背面の壁の色も選ぶことができる。
LIXIL インテリア内観シミュレーション(リビング)
床・ドア・収納家具(テレビボード)のみ。ソファなどの家具は無い。
上記のシミュレーションを含め、壁紙や家具の色をシミュレーションできるサイトは下記で詳しく紹介しています。
- ネットで様々なインテリアを目にすることができる
- お店まで足を運ぶことなく重い家具を手に入れることができる
- 床や壁の雰囲気をDIY感覚で変えることができる
といった現代に合ったインテリア配色の知識を解説しました。
また、一番最後に紹介した内装のシミュレーションは、各メーカー自社製品のみの対応ではあるものの、床と家具の木目の組み合わせ方を実感するのに、とても有益だと感じます。数年前まで、このようなシミュレーションは存在していなかったので、インテリアの好みが多様化している証拠ではないかと思っています。