装飾性が少なく、シンプルなモダンインテリア。
建売住宅やマンションの内装(フローリング・壁・天井の配色、ドア・引き戸・収納家具のデザインと色)は、モダンを意識したデザインが多く、ソファやテーブル、チェアや収納をモダン家具で揃えても違和感の無い作りになっています。
モダンな家や部屋は、装飾が少ない日本様式の家(和風)と似ているところがある為、住まいが欧米化した時、日本人が自然に受け入れることができ、更に言えば「狭い建築物を少しでも広く見せたいという心理」と「モダンのシンプルなデザイン」が相性が良かった為、そのまま住まいのスタイルとして定着していったのではないかと考えます。
ところで、モダンインテリアと聞いて、黒レザーやクロムメッキを組み合わせ、ダークブラウンの木目調家具を置いた比較的重厚感のあるインテリアを思い浮かべてしまいませんか?
これはモダン建築の巨匠と言われるル・コルビュジエ(Le Corbusier)がデザインしたソファや寝椅子が有名だからかもしれません。インテリアに少し詳しい方なら、いつかリビングに置いてみたい憧れの家具の上位に君臨しているのではないかと推測しますが、黒レザー×シルバーの組み合わせは少しハードな印象です。
上記のような男性っぽい印象のモダンインテリアを上品で優雅な印象にしたインテリアにエレガントモダンインテリアがあります。
エレガントモダンインテリアは、モダンインテリアをベースに、上品な印象や優雅な印象をアップしたスタイルです。一般的なモダンインテリアと比較しながら、エレガントモダンインテリアの作り方を8つのポイントに分けて、実例とともに紹介していきましょう。
【コツ1】黒を少なめ、ホワイトやグレーを多めに配色する
ソファ・テーブル・テレビボード・ラウンジチェア・ダイニングテーブル・ダイニングチェア・収納家具・カーテン・ラグなどの色を黒ではなく、グレーにすると「上品さ」がアップして見えます。
リビングの主役であるソファをグレーにして、更に上質な印象をもたらすベルベット素材に。
ソファ、ラグ、コーヒーテーブル(オットマン)の全てを暗さの違うグレーでまとめたリビング。
一番明るい窓付近をホワイトでまとめた開放的なリビング。
上記のどの色を使ってもモダンインテリアを作ることができますが、軽く感じる色(薄いグレー→ホワイト)を多くコーディネートすると、エレガントモダンのスッキりとした印象を作り出すことができます。
【コツ2】木目調家具を置くなら濃い茶色よりも薄い茶色
テレビボード・コーヒーテーブル・収納家具・ダイニングテーブル・ダイニングチェアなど、木製の家具をコーディネートする場合、暗い茶色よりも薄い茶色の木目の方がエレガントに見えます。
グレーのラグと白っぽいグレーのソファを組み合わせたリビングのコーヒーテーブルを薄い茶色の木目に。
グレーのソファとアイボリーのアームチェアをL字にレイアウトし、中央に白っぽい茶色の木目の円形コーヒーテーブルをプラス。
ホワイトレザーのL型ソファとホワイト鏡面の長方形コーヒーテーブルをコーディネート。
下記の木目が持つイメージを参考に、「木目が目立つ」「軽く感じる」色合いの木目家具を配置すると、上質感のある上品なエレガントモダンを作り出すことができます。
【コツ3】ガラス素材・透明素材を取り入れる
コーヒーテーブル・ダイニングテーブルなど、天板がある家具をガラスや透明アクリルなど、透ける素材にするとエレガントに見えます。
対面キッチンの前にあるテーブルとチェアを両方とも透明アクリルにしたダイニング。
透明アクリルのコンソールテーブルをテレビボードの代わりにコーディネート。
薄いグレーの3人掛けソファの前に透明アクリルの長方形コーヒーテーブルをコーディネート。
これらの家具は、家具自体の存在感が薄い為、エレガントな印象をアップするだけでなく、狭い部屋を広く見せる効果にも期待できます。
【コツ4】シルバー・ゴールドの金属色を取り入れる
インテリアを構成する素材には、木やファブリック以外に、ステンレス・鉄・アイアンなど、様々な金属が使われています。
また、テーブルの天板を支える脚、棚板を受けるブラケットにも、木以外に金属を使ったものがあります。
シルバー色やゴールド色の金属色は、インテリアを優雅に見せる色です。テーブルの脚、ペンダントランプの鎖、額縁、インテリア雑貨をシルバーならシルバー、ゴールドならゴールドで統一してみましょう。
角ばったコーヒーテーブルの側面と脚を艶消しゴールドに。
シルバーのフレームとガラスを組み合わせた大きな長方形コーヒーテーブルをリビングの中央に。
ゴールドのトレイテーブル2台を薄いグレーの3人掛けソファとグレーのラウンジチェアの間にコーディネート。
【コツ5】紫を取り入れる
紫は、高貴や高尚な印象を持つ色です。ソファやアクセントクロスなどの大きな面積ではなく、クッションやアートやインテリア雑貨で取り入れると、エレガントな印象が一気にアップして見えます。
白っぽいグレーの寝椅子付き3人掛けソファに、紫の無地クッションと暗いグレーの無地クッションをコーディネート。
グレーの壁の前に、ホワイト鏡面のサイドボードをレイアウトして、紫のアートをディスプレイ。
白っぽいグレーの2人掛けソファとホワイトのカウンターを壁を背に対面にレイアウトし、間にグレイッシュな薄い紫のラグをコーディネート。
しかしながら、紫は【コツ1】で解説した「薄いグレー→ホワイト」とも相性が良い色です。
「茶色のフローリングと紫が合うか検討もつかない。」という方は、下の茶色のフローリングと紫のソファのコーディネートをご覧ください。
【コツ6】パターン柄は大きな柄より小さな柄(薄い柄含む)
配色だけでエレガントな印象を作るには限界があります。というのも、インテリアコーディネートに適している色の数が、2~3種類だからです。例えば、ソファを薄いグレー、テーブルや収納家具をホワイトにして、インテリア雑貨で紫を足してしまった場合、使える色が残っていませんよね。いくつもの色を使って、カラフルに仕上げるインテリアもありますが、このコーディネートの仕方は、スッキリとしたおしゃれ感が魅力のエレガントモダンとは方向性が違います。
そんな時使えるのがパターン柄です。「小さな柄」「薄っすらとした柄」を選ぶと、エレガントな印象を損なうことなく「何だか殺風景」と感じるインテリアを格上げします。
ソファの下に薄いグレー×グレーのウロコみたいなパターン柄のラグをコーディネート。
ソファの下に、白っぽいグレー×灰みがかった薄い茶色の細かいパターン柄のラグをコーディネート。
薄いグレーの寝椅子付き2人掛けソファに、黒×ホワイトの細かいパターン柄のクッションとグレー×ホワイト×黒の小さなパターン柄の横長クッションをコーディネート。
【コツ7】エレガントなシャンデリアやペンダントランプを下げる
住宅の天井高は数年前まで240cmが一般的でしたが、ここ10年以内に新築された住まいやマンションは、それよりも10cm高い250cm程度で、天井を高く設計してあることが増えてきました。
天井高がある部屋は、広く見えるのが特徴で、天井から器具をぶら下げるタイプのペンダントランプやシャンデリアを下げても、鬱陶しく感じないのがメリットです。
インテリアは、配色や家具のデザインだけでなく、照明器具のデザインで印象が随分変わってきます。特に、リビングやダイニングの照明器具は、テーブルの真上に取り付けることが多い為、天井より下がった位置にランプが下がっていても問題ないように思います。
デザインが豊富な吊り下げ式の照明器具をリビングの天井に取り付けると上質なくつろぎ空間になります。
リビングの天井に、先端にフィラメントボール球とガラスシェードがついた枝みたいなデザインのペンダントランプをコーディネート。
リビングダイニングの天井に、ゴールドの支柱とフィラメントボール球を組み合わせた、5方向を照らすペンダントランプをコーディネート。
リビングの天井に、上下左右にフィラメントボール球とガラスシェードがついたペンダントランプをコーディネート。
【コツ8】グイレッシュなアクセントカラーを取り入れる
インテリアの中に、挿し色(アクセントカラー)を取り入れると、おしゃれな印象が一気に増し、挿し色は映える色であることが望ましいとされています。
しかしながら、エレガントモダンインテリアは、「すっきり」「上品」「上質」がテーマのインテリアなので、赤・黄色・青・緑をそのまま取り入れると、親しみやすさがアップして「上品」「上質」な印象が損なわれる可能性があります。
エレガントモダンに合う挿し色は、明度や彩度が低めの色。鮮やか過ぎず、暗過ぎない色合いが、エレガントな印象をそのままに、インテリアを格上げするのに一役買ってくれます。
暖色のエレガントなアクセントカラー
グレーのコーナーソファとくすんだ暗い赤の丸型クッションをコーディネート。
グレーのベルベット2人掛けソファと暗い赤・オレンジ・黄色のクッションをコーディネート。
寒色のエレガントなアクセントカラー
白っぽいグレーの3人掛けフロアソファと暗めのターコイズブルーの無地クッションをコーディネート。
薄いグレーの2人掛けソファと薄くくすんだ青緑の無地クッションをコーディネート。
中性色のエレガントなアクセントカラー
グレーの3人掛けソファと暗い緑の無地クッションをコーディネート。
グレーの2人掛けソファと暗い黄緑の凸凹クッションをコーディネート。
今回パースに使ったのは、マンションによくあるファミリー向けの配色のリビングです。
このようなどこにでもありそうな部屋は、モダンインテリアを作るのに適しており、更に配色や素材にこだわってコーディネートしていくとエレガントな印象がいくらでも出せることが伝わったでしょうか。
また、筆者の経験上、男性は黒を多く使ったかっこいいモダンインテリア、女性は淡い色を多く取り入れたエレガントモダンインテリアに惹かれる傾向にあると思っています。
「意見が対立して、インテリアが決まらない」という場合は、下のような折衷案にする方法もあります。
ソファ・ラウンジチェア・フロアランプを黒、壁・ラグをグレーでコーディネート。
コーヒーテーブルとダイニングチェア・ダイニングのアクセントクロス・ソファ用クッションを黒、ラグをグレー、ダイニングテーブルを暗い茶色の木目でコーディネート。
ソファを黒、ラグを暗いグレー×黒のパターン柄、円形コーヒーテーブル・サイドテーブルを暗い茶色の木目、テレビボードを薄い茶色の木目でコーディネート。