不動産屋さんやポストに投函されるマンションや建売住宅・中古住宅の平面図には「リビングダイニング12帖」「LD15帖」などと表記してあります。
12帖、15帖と聞くと「とても広そう!」と思ってしまいますが、「ダイニング4.5帖とリビング7.5帖のリビングダイニング」や「D6帖とL9帖のLD」と書き直すと、一気に現実味を帯びた数字になります。
ところで、このリビングダイニングが一体になった空間の家具レイアウトを考える時、意外と見落としがちなのがダイニングエリア。
近年の間取りは、対面キッチンの前にリビングダイニングが広がる開放的なものが多い為、これまでダイニングにレイアウトしていた食器棚や冷蔵庫、家電収納はキッチンエリアに移動し、「ダイニングには、ダイニングテーブルとダイニングチェアのみでOK」という考え方が刷り込まれているせいかもしれません。
ダイニングに必要なテーブルには、様々な大きさや形があり、わずか30cmの違い(例:幅120cmのダイニングテーブルと幅150cmのダイニングテーブル)で、動きやすさ(動線)や食事のしやすさが違ってきます。
また、「対面カウンターに脚の長いおしゃれなスツールを置いて、おしゃれなカフェみたいな雰囲気にしたい」となった場合、「後ろのダイニングエリアに、どの程度、家具が占領し、どの程度スペースを空けておく必要があるか」を知っておかないと、せっかく買ったカウンターチェアに座ることが出来ないということが起こります。
更には、実際には、大きなダイニングテーブルを置く余裕が無いのに、「じぃじやばぁばが来た時の為」と6人掛けテーブルを買ってしまい、「椅子が引けない」「人が通れない」となってしまうことも。
ダイニングレイアウトを計画する時に覚えておきたい数字とレイアウト例を紹介しますので、参考にして下さい。
- ダイニングテーブル一人分の広さの目安
- ダイニングテーブルの高さとダイニングチェアの高さの最適な組み合わせ
- 「椅子を引く」「椅子に座る」「椅子の後ろを通る」などダイニングテーブルの周りに必要なスペース
- ダイニングに食器棚などテーブル以外の家具を置いた場合の必要なスペース
- ダイニングテーブルの大きさ別ダイニングの広さ
- ダイニングのレイアウトパターン
①ダイニングに必要な家具
①-①ダイニングテーブル
ダイニングテーブルの大きさは、下記の1人分のサイズを参考に選定します。○人セットと記載してあるテーブルには、下記を満たさない幅の製品もある為、注意しましょう。
①-①-①テーブル上の広さ(1人分)
※一般的なランチョンマットの大きさ 幅45cm 奥行35cm
また、忘れがちなのが、テーブル脚。脚の位置が天板より内側に入っているデザインの場合、「横に並べたチェア同士がぶつからないか」、脚の内側のサイズとダイニングチェアの幅を確認しておきましょう。
脚が内寄りについているデザイン
脚が外寄りについているデザイン
①-①-②4人掛けダイニングテーブル
①-①-③丸型ダイニングテーブル
※ただし、テーブル上の1人分の【幅】60~70cm【奥行】35~40cmは確保できません。
①-②ダイニングチェア
ダイニングチェアには、横から見るとL型のシンプルなデザイン、ひじ掛けがついたアームチェア、回転式など様々なデザインがあります。
長方形ガラステーブルに、ひじ掛けの無いシンプルなL型チェア(イームズチェア)をコーディネート。
長方形ダイニングテーブルに、アームチェアをコーディネート。
長方形ガラステーブルに、アーム付きの回転チェアをコーディネート。
①-③ダイニングテーブルと椅子の高さ
- ダイニングテーブルを自作したい
- 今使ってるダイニングテーブルにヴィンテージショップで買ったかっこいいチェアを組み合わせたい
- テーブルのデザインはこっちが好きだけど、こっちの椅子の方が合う気がする
- ダイニングテーブルとソファを組み合わせたい
等、テーブルと椅子を別々に買う時に覚えておくと良い便利な数字です。
また、ダイニングテーブルとダイニングチェアがセットになった○人掛けダイニングテーブルセットを買う場合でも、自分の体格に応じた最適なテーブルと椅子の高さを覚えておくと「微妙に腕が上向きになって使いづらい」等の失敗を防ぐことができます。
差尺とは、(床からテーブル天板までの高さ)-(床から座面までの高さ)のこと
筆者の自宅のダイニングは
- テーブル:一枚板のダイニングテーブルにホームセンターで購入した脚をくっつけたDIY製
- チェア:店舗用ソファとIKEAの一人掛けソファ(シート高51cm)
テーブルとチェアの差尺を27cm(テーブル高78cm)で設定し、パソコン作業をするワークスペースとしても活用していました。
先日、一人掛けソファの汚さに驚愕し、エレガントデザインのソファに買い替えたのですが、新しい方のソファのシート高は48cm。「座面が3cmくらい低くなっても大丈夫だろう」と思っていましたが、たった3cmで使い勝手が抜群に悪くなってしまうハメに。ソファの上にクッションをソファ用クッション敷いて、テーブル高とのバランスを取って使用しています。
②ダイニングエリアの動作に必要なスペース
ダイニングエリアでは、「食事をする」、「テーブルの周りを通過する」の2つの動作のスペースが必要になります。
この2つは、対面カウンターにカウンタースツールを置いて、ダイニングテーブルも置く場合にも重要になってきます。
②-①食卓につく
②-①-①椅子を引く:75cm
ダイニングチェアに回転デザイン以外を選んだ場合は、椅子を後ろに引いて腰かける必要があります。椅子を引くスペースは75cm程度です。
②-①-②椅子に座る:50cm
椅子を引いて座り、テーブルの前まで椅子ごと身体を移動させた時(食卓についている状態)、テーブルの前から椅子の後ろまでは50cm程度です。
②-②テーブル周り
②-②-①お皿やお鍋を持って歩く:75cm
「調理済みのお鍋を食卓に運ぶ」「食器をテーブルまで持って行く」など、腕を上げた状態でダイニングテーブルの周りを通過する場合は75cm程度のスペースが必要です。
②-②-②何も持たないで通る:60cm
両手を下したまま、ダイニングテーブルの周りを通過する場合は60cm程度のスペースが必要です。
②-③カウンタースツール
対面カウンターに背の高いチェア(カウンタースツール・バースツール)を置いてカフェ風のインテリアにする場合は、対面カウンターの前から60cm以上スペースを取るようにしましょう。
チェアの背中同士を合わせたレイアウトでは、カウンタースツールのスペース(60cm)とダイニングチェアのスペース(60cm)が必要になる為、カウンタースツールの背中とダイニングテーブルの誰も座らない面を組み合わせたレイアウトの方が省スペースになります。(※カウンタースツールの後ろを人が通る場合は、対面カウンターの端からテーブルの端まで100cm以上必要)
②-④ダイニングの周辺家具
ダイニングスペースに食器棚や収納家具を置く場合は、「扉無し(オープン)」「引き出し付き」「開き扉の幅」によって必要な空間が変わってきます。
どの場合も「家具の奥行+人が入るスペース」が必要になることを忘れないようにしましょう。また、腰より下の扉を開ける時は、お尻が突き出す為、立って扉を開ける時よりも後ろのスペースが広く必要になります。
③家具+スペースでダイニングは何帖を占めるのか?
③-①長方形ダイニングテーブル+チェア4脚
ダイニングテーブルサイズ140×85cmの場合。
③-②長方形ダイニングテーブル+チェア6脚【パターン1】
テーブルサイズ220×100cmの場合
③-③長方形ダイニングテーブル+チェア6脚【パターン2】
テーブルサイズ235×80cmの場合
③-④丸型ダイニングテーブル+チェア4脚
ダイニングテーブルサイズ直径115cmの場合
③-⑤丸型ダイニングテーブル+チェア6脚
ダイニングテーブルサイズ直径166cmの場合
④ダイニングエリアの家具レイアウトパターン
④-①ダイニングテーブル+ダイニングチェア
ダイニングエリアの壁に寄せて長方形ダイニングテーブルを配置し、長い方の面に黒のイームズチェアを2脚ずつレイアウト。
壁付けキッチンの前にあるダイニングエリアに長方形ダイニングテーブルを配置し、4面に木製ダイニングチェアをレイアウト。
対面カウンターの前にあるダイニングエリアに丸型ダイニングテーブルを配置し、黒の木製ダイニングチェアを4脚レイアウト。
④-②ダイニングテーブル+ベンチ
ダイニングチェアはテーブルの前から60cmのスペースが必要ですが、ダイニングベンチはテーブルの前から50cmと10cmほどコンパクトにレイアウトすることができます。
片方だけをベンチにしたダイニング。
両方をベンチにしたダイニング。
両方をベンチにして、短い方の面にスツールをレイアウトしたダイニング。
④-③ダイニングテーブル+ソファ
ダイニングテーブルとソファを組み合わせたダイニングソファにする場合は、「①-③ダイニングテーブルと椅子の高さ」を目安に選定します。ソファの場合は「椅子を引く」動作が無いので、「テーブルの前から75cm(椅子を引くスペース)」が必要ありませんが、背もたれに厚みがある為、ダイニングチェアよりも奥行が必要になることが多いので、注意しましょう。
キッチンの対面カウンターと平行に長方形ダイニングテーブルをレイアウトし、対面カウンター側にアームチェア、反対側(窓側)にソファを配置。
長方形ダイニングテーブルの片側にダイニングチェア、反対側(腰窓側)にソファを配置。
長方形ダイニングテーブルの片側にダイニングチェア、反対側(壁側)にソファを配置。
④-④ダイニングテーブル+食器棚やサイドボード
長方形ダイニングテーブルの短い面(椅子が無い面)側の壁面に、腰までの高さのサイドボードをレイアウトしたダイニング。
長方形ダイニングテーブルの短い面(椅子が無い面)側の壁面に端から端まで、腰までの高さのサイドボードをレイアウトしたダイニング。
長方形ダイニングテーブルの長い面(椅子がある面)側の壁面に、フロアキャビネットとウォールキャビネットを組み合わせた食器棚をレイアウトしたダイニング。
④-⑤ダイニングテーブル+カウンタースツール
対面カウンターにカウンタースツールを組み合わせ、その後ろに丸型ダイニングテーブルをレイアウトしたダイニング。
対面カウンターにカウンタースツールを組み合わせ、その後ろに長方形ダイニングテーブルをレイアウトしたダイニング。
対面カウンターにカウンタースツールを組み合わせ、対面カウンターの無い空間に丸型ダイニングテーブルをレイアウトしたダイニング。
④-⑥ダイニングテーブル+ワークスペース
ダイニングエリアの中央に丸型ダイニングテーブルを配置し、壁面に向かって収納付のデスクをレイアウト。
対面キッチンカウンターがあるダイニングエリアの中央に丸型ダイニングテーブルを配置し、対面カウンターと反対側の壁面に向かってワークスペースをレイアウト。
ダイニングエリアの中央に長方形ダイニングテーブルを配置し、壁面に沿ってL型にワークスペースをレイアウト。
いかがでしたか。
ダイニングは、4人掛け長方形テーブルで最低でも3~4畳半ほど。
この数字さえ頭に入れておけば、冒頭で紹介した平面図を見ても、周りにどのくらいのスペースが残るかが想像しやすくなります。
このページで紹介した数字は、全て最低必要な数字です。記載した数字以上のスペースを空けると、広々とした印象になることも覚えておきましょう。