リフォームでキッチンのレイアウトをガラリと変えることができる場合、筆者が接するお施主様の大半が、キッチンがリビングダイニングの方向に向かって鎮座する対面キッチンを希望されます。
でも、中にはキッチンを壁に向かってレイアウトして、キッチン空間を広々と使いたいという方やダイニングスペースを広く取りたいという方もいらっしゃいます。
壁付けキッチンのメリット・デメリット、I型・L型の違いなどを対面キッチンと比較しながら解説していきますので、壁に向かったキッチンに興味がある方は参考にして下さい。
壁付けキッチンのメリットとデメリットを知っておこう
壁付けキッチンのメリット
【メリット1】対面壁が無い分コストを抑えることができる
壁に向かってキッチンを設置する壁付けキッチンは、ダイニングとキッチンの間に腰壁を立てる必要がありません。腰壁を作るのに必要な木材、仕上げ材、人工が不要になる為、コストを抑えることができます。

キッチンを取り付けるための壁・腰壁、腰壁の上に乗せるカウンターが必要になります。また、腰壁のダイニング側からの見た目を気にする場合は、腰壁におしゃれな壁紙・タイル・パネル等を貼って、意匠性を高める必要がある為、コストがアップします。
【メリット2】キッチンスペースやダイニングキッチンを広く使え、自由に行き来することができる
壁付けキッチンに必要なスペースは以下の通りです。

上の数字だけを比較すると、壁付けキッチンは対面キッチンの半分ほどのスペースでキッチンを設置することができるのがわかります。
同じ広さのダイニングキッチン(DK)があった場合、壁付けキッチンは130cmの余りができる為、余裕のある空間を演出することが可能です。
【メリット3】大きなダイニングテーブルを置くことができる
壁付けキッチンがあるダイニングキッチンの場合、余計な壁が無いことで、壁厚分広くしたダイニングテーブルを置くことができます。【メリット2】で説明した通り、単純比較で130cm分余裕がある為、大きなダイニングテーブルを置くことが可能です。
【メリット4】余計なものが視界に入らない為、料理に集中できる

壁付けキッチンは、壁に面して設置してあるキッチンです。キッチンの前に立った時、目の前にあるのは壁(または窓)です。常に壁に向かって作業する為、集中できます。

ダイニングやリビング、テラスなどが視界に入る為、気が散りやすくなります。
【メリット5】広く見える
空間を広く見せるには床面を多く見せる
これは、キッチンに限らず、どの部屋でも言えることですが、壁面に沿って家具をレイアウトすると部屋が広く見えます。
キッチンを家具に見立てると、「壁付けキッチン」は文字通り、壁に沿って家具を置いているのと同じレイアウトになる為、広く感じます。
また、ダイニングとキッチンの間に仕切り壁が無い為、キッチンとダイニングの床が繋がって見えることも広く感じる要素の一つです。

同じ広さでも壁(腰壁)の仕切りによって床面が分割されてしまい、キッチンとダイニングが別々の空間のように見えます。
【メリット6】ダイニングテーブルを調理台や配膳台として活用できる
食材を多く使う料理や大きな葉物を扱う料理の場合、コンパクトなキッチンでは置き場所がなくなる場合があります。また、出来上がった料理をお更に盛る作業は、食器の数が多ければ多いほど広い配膳スペースが必要になります。
キッチンの真後ろにダイニングテーブルがある壁付けキッチンの場合、ダイニングテーブルを調理スペースや配膳台として活用することができる為、料理好きな方に最適なレイアウトと言えます。

対面カウンターの上を活用することになりますが、対面カウンターの前にキッチンがある為、対面カウンターに手を伸ばすには背伸びをしなければならないこともあります。
また、奥行きの狭い対面カウンターを取り付けている場合や腰壁が無い対面キッチンでは、キッチンの配膳スペースや調理スペース以外に物を置く場所がありません。
【メリット7】水ハネや油飛びの掃除がしやすい

キッチン正面は壁なので、油や水の飛び散りは全て壁が受け止めてくれます。

対面カウンターの上やダイニング側の床に水が飛び跳ねることもあります。
【メリット8】キッチンの扉柄も含めて統一感のあるコーディネートができる

ドア・収納扉・キッチン扉のデザインを揃えることができるのは、壁付けキッチンでも対面キッチンでも同じですが、壁付けキッチンは、リビングやダイニングからキッチンが丸見えになるレイアウトです。
- LDKの入口ドアとキッチン扉をクラシック調で揃える
- LDKの入口ドアとキッチン扉を同じ木目で揃える
- リビング収納家具とキッチン扉を同じデザインで揃える
といったコーディネートをすることで、空間に統一感を生み出すことができます。
また、アンティーク感のある扉柄を選定して高級家具のようにキッチンを見せることができるのも「壁付けキッチンならでは」です。
更に丸見えであることを活かして、キッチン前のパネルやタイルと扉、壁紙と扉などをおしゃれにコーディネートすることも可能です。
ダイニングテーブルとウォールキャビネットの色をホワイトで統一した壁付けキッチンのあるダイニングキッチン。
フロアキャビネットをダークグレー、ウォールキャビネットをミディアムブラウンの横木目にして、キッチン前の壁を薄いグレーのコンクリート調、ウォールキャビネットの上の壁とキッチンのエンドパネルをスモーキーなグリーンで統一したヴィンテージ感のある壁付けキッチン。
フロアキャビネット、トールキャビネット、キッチンパネルをグレーのコンクリート調で揃えた無機質な壁付けキッチン。
キッチン前のタイルやキッチンパネルを凝ったデザインにしても、他のエリアから見えない為、おしゃれ感が半減します。
壁付けキッチンのデメリット
【デメリット1】孤独を感じやすい

洗い物をする時、料理する時、火を使う時、どの作業をする時も常に壁に向かって作業をすることになります。【メリット4】の「集中できる」は、見方を変えると「孤独になりやすい」です。
【デメリット2】冷蔵庫や食器棚、家電を置くための壁面が少ない

冷蔵庫や食器棚、家電は、壁を背にしてレイアウトするのが基本です。
壁付けキッチンは、キッチンの周りに2~3面の壁しかなく、そのうちの1つをキッチンに独占されてしまう為、これらを置くスペースがなくなってしまうこともあります。
後述しますが、壁付けI型キッチンの場合は、それぞれの場所に行く距離が長くなり、使い勝手の悪いキッチン空間になる可能性もあります。
【デメリット3】キッチンが丸見えになる
腰壁でキッチンを隠すことができる対面キッチンとは違い、壁付けキッチンは、シンクや調理機器が他の場所から丸見えになります。お鍋・洗った食器・調味料やカトラリー類を出しっ放しにしてしまう人には向かないレイアウトです
【デメリット4】ダイニングとのコミュニケーションが取りづらい
壁付けキッチンの場合、キッチンとダイニングが背中合わせになります。その為、キッチンとダイニングのコミュニケーションは以下のようになります。
- ダイニングからキッチンへの声掛け:背中に向かって
- キッチンからダイニングへの声掛け:振り返りが必要
それぞれの場所にいる人の表情が見えない為、気軽に声をかけるのに躊躇してしまうことがあるかもしれません。
壁付けI型キッチンと壁付けL型キッチンどっちが良い?
キッチンはI型2400~2550mm、L型(シンク側)2400~2550mm×(調理機器側)1650または1800mmが一般的なサイズです。
キッチンでの動きと適切な距離
キッチンには壁付けキッチン、対面キッチン、I型キッチン、L型キッチン等、様々な形とレイアウトがありますが、どんなキッチンでもキッチンスペース内の動きは、以下の通りです。
②キッチンカウンターの上に仮置きする
③シンクで洗う
④切る(調理スペース)
⑤鍋に入れて火を通す
⑥出来上がったものをお皿に盛る(配膳スペース)
上記に、加熱の電気オーブンレンジが加わることもあります。
冷蔵庫からシンク、シンクから調理機器、調理機器から冷蔵庫へ動く三角形は“キッチントライアングル”と呼ばれており、それぞれの移動距離を足して合計510cmになるのが使いやすいキッチンだと言われています。
壁付けI型キッチンの距離

- 冷蔵庫からシンク:約105cm
- シンクから調理機器:約140cm
- 調理機器から冷蔵庫:約210cm
合計455cm
壁付けL型キッチンの距離

- 冷蔵庫からシンク:約145cm
- シンクから調理機器:約82cm
- 調理機器から冷蔵庫:約200cm
合計427cm
- L型キッチンは、I型キッチンよりも広いダイニングキッチンスペースが必要
- L型キッチンは、壁面がキッチンによって2箇所つぶれてしまう為、家電収納スペースや食器収納・キッチン雑貨収納場所の計画をキチンと立てておく必要がある
- キッチントライアングルの適切な距離を考えると、「壁付けI型キッチンの場合はキッチンと冷蔵庫をL字に」「壁付けL型キッチンの場合はキッチンと冷蔵庫を横並びに」した方が良い
などを挙げることができます。
壁付けキッチンのアレンジ実例
壁付けL型キッチンの調理機器側をオープンにして、ブラック金属脚とミディアムブラウンの木製天板を組み合わせた長細いテーブルをL字に足し、3人掛けダイニングテーブルとして活用。
壁付けI型キッチンの背中側に、キッチンと平行に、ブラック金属脚とナチュラルブラウンの木製天板を組み合わせた背の高い長細いテーブルを置いて、バーカウンターのように活用。
いかがでしたか。
壁付けキッチンのメリット8つとデメリット4つを対面キッチンと比較しながらパースを用いて解説しましたが、参考になったでしょうか。
一昔前までは、システムキッチンの無い住まいが多く、台所と言えば、流し台が一般的でした。壁付けキッチンは、流し台と似たようなレイアウトですが、現代のシステムキッチンは進化しており、丸見えでもおしゃれに見えるところがポイントです。
「これからLDKのインテリアも含めてキッチンレイアウトを考えていく予定」という方は、下記もヒントにしてみて下さい。